人生かっぽ

人生かっぽ —佐藤大地ブログ

哲学、言葉、人生観、仕事、恋愛、など人生をかっぽするような物語をつむぎます。宮城県 仙台市を主な活動拠点とする佐藤大地のブログです。2014年からEvernote公式アンバサダー。大学院では政治学を研究していました。

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あの頃 ぼくは職場で“弱者”でした。けど、あるリストをきっかけに……

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「課長……」
ぼくは、手に“問題”のリストを持って行く。

ん?と課長は書いていた書類から目を上げる。

「このリストなんですけど
 担当、この課じゃないから
 この課の中では分からないですよね……?」
自信の無さが語尾の小ささに出る。
そのリストについて同じ課の中で分かる人はいない。
けど仕事はしないといけない。


「だったらどうするの?」

求めていた斜め上から答えが返ってきて、
ぼくはたじろぐ。

「どこに行けば分かるの?」

「◯◯課…ですか…?」

「分かってんじゃん」


それは、
行ってらっしゃい
ということでした。


それが、ぼくの
大海原への冒険の旅の始まりでした。

Sea
Sea / Moyan_Brenn


同じ組織と言っても
課が違うというのは
ぼくにとって赤の他人と話すことで
とんでもないハードルだったのです。


“人見知り”
あの頃、ぼくはその典型例で
それは職場にいても変わらず
極力関係のない人とは話をしたくない
というスタンスでいましたし
もっと言えば
話して意味あるのか、
くらいにまで思っていました。



とうとう大海原に出てきた。

5つほどの課が
部屋も異なって配置されていたぼくのいた会社。


他の課がある部屋に入って行って
ろくに話をしたこともない人に
話しかけていくことは
ぼくにとって未知の領域でしかない。


リストを握りしめる。
そのリストについて知っていそうな課の
できれば一番やさしそうな人に話しかけに行く。


「あの、すいません」
女性のパートさんに話しかけた。
名前は、なんだっけ。知らない。


そして相手もきっとぼくの名前など知らない。
そんな顔でこちらを見ている。


「このリストについてご存知かと思って
 伺いたいんですが
 いま、大丈夫でしょうか」
その女性はリストをちょっとのぞき込む。
それから
「あ、これタカハシさんに聞いて」
これで終わった。
まるでぼくがタカハシさんを
当然のごとく知っているかのようだ。


タカハシさん。


タカハシさん。


いや、それとも
今、「タカナシさん」って言った……?


どこだ、タカハシか、タカナシさん。


大海原を見渡す。
分からない。


「すいません」
もう一度同じパートさんに話しかける。



「そのタカハ(ナ)シさんというのは
 どちらにいらっしゃいますか?」
わざと「ハ」と「ナ」を濁して発音する。


「ああ、あそこ」
相変わらず女性が素っ気ない感じで
大体のエリアを指した。
そして、あそこのメガネの人、と言う。


ありがとうございます。
とお礼を彼女に言ってから
結局タカハシさんかタカナシさんか
分からない人を探しに行くと
更なる困難が待ち構えている。



メガネが、二人いる。

Old Eyeglasses
Old Eyeglasses / Leyram Odacrem




どっちだ。


どっちがタカハシかタカナシだ。


幸いにして名札はしているから
あまり挙動不審にならないように
席の周りをぐるぐる動きながら
該当者2名らの名札をチェックしようとする。


けれど
かがんでいて、よく分からない。


どっちだよ。


結局、タカハ(ナ)シっぽい人の間に立って
どっちが反応しても良いように
声をかける。
「タカァシさん」


そうすると、「タカァシ」さんが顔を上げた。


名札で無事「高橋」であることを確認。


胸をなでおろす。
これで無事にことは済んだかと思った。
が、しかし。


「お仕事中すいません。
 ◯◯課の佐藤です。
 このリストについて質問があるのですが
 今よろしいですか?」


「はい、どうぞ」
素っ気ない。というか、重たい空気。


質問に対する答えに
何一つ不満はなかったのだけれど
どこぞのもんとも分からぬ
バイトのぼくの質問に答えるのは
決して楽しそうではない。


そういうわけで、
余裕があれば
次の仕事に生かすために
聞いておきたいこともあったのだけれど
聞く勇気を振り絞れない。


「ありがとうございました」
結局、申し訳なさそうにそそくさと
ぼくは高橋さんの席を離れる。


ただ、席を離れてしばらくすると
その課のバイトたち
(ぼくの職場はその当時、課ごとにバイトが入る)
と愉快そうに話す高橋さんの声が聞こえた。
「なんだ、この、人の違いは……」


こんな感じで和やかに話せたら
ぼくだってもっと色んなことを聞き出せたはずだ。
ぼくと同じ課のひとたちに対してできるように。


余裕がなくて、
最低限のことしか聞けなかったショックが走る。



Colorful Wool Yarn
Colorful Wool Yarn / Jeff Kubina

“関係作り”
ってやつか。


そこで、やっと、気づいたのです。
自分が、“弱者”だったということに。


プレゼン力でも論理力でもない。


日頃の”単なるコミュニケーション力”が
職場で自由に情報を集めていく上で
大切なことだと気づいたのです。


関係が良くなれば
コミュニケーションが
ストレスじゃなくなる
ストレスがなくなれば
聞きたいことが聞ける。
言いたいことが言える。


それができないのは、組織では、弱者だ。



そこからぼくは
職員とパートさんの名前を座席表を見て
全部おぼえ始めました。



朝のあいさつをして回るときは
できるだけ
「◯◯さん、おはようございます」
と名前を呼ぶ。


それから、話しかけるチャンスがある人は
どんどん話しかけて行きました。
例えば、ちょっとでも困っていそうなスタッフがいたら
「なんか手伝いましょうか?」
と言って話しかけるチャンスを持つ。

Relationship
Relationship / Y0$HlMl


何のことはないのです。
「全て同じ組織で関わる人」
そう思えば良かったのです。


しかし
中規模組織くらいになってくると
下手なタテワリがそこを邪魔していました。


それが、情報を流れにくくさせ
仕事の質を低下させていました。


この経験は後にぼくが「たかがバイト」として
組織のタテワリをなくして行こう
と動き出すきっかけになります。


それが素晴らしい日々の始まりでもありましたし
悲しい日々の始まりでもありました。


前回の話


だから仕事が終わらないんだ。僕に気づきを与えた1つの助言 - 人生かっぽ — 佐藤大地のブログ


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