また付き合ったカレは、元のカレじゃなかった
「別れて戻るまでの時間はたった1年と半年。数字だけで言えば。
彼は彼で色んな人と色んな時間を過ごしてきていて
私も付き合っていた人は何人かいました」
「それで、彼の過去が気になっちゃったわけですよね」
ぼくが聞く。
「ダメだったんです。もともと嫉妬深い性格なんだとは思うんですけど
彼の変化ひとつひとつが気になりすぎちゃって、そこに過去を想像してしまって嫉妬しちゃって」
全てが全て、同じ時間に戻るわけじゃない。
Beef and potato stew in Japanese-style / pelican
最初のちょっとした違和感は、デートで外食をしている時だった。
「今日さ、何食べようか?」
彼女からそう切り出した。
「あ、あそこのカフェでご飯食べられるから、あそこにする?」
その彼の返答に何となく違和感を持った。
カフェなんて場所で、ご飯食べようと思う人だったっけ。
自分が知らない彼の過去が、うっすら見えた気がして貼れない気持ちになる。
「何回かここ来たことあるんだ?」
晴れない気持ちをひきずったまま、彼に何となく聞くような素振りで、聞いた。
「うん、何回かねー」
晴れない気持ちは、結局晴れることなく、そっか、と話は途切れる。
けれど、それくらいはまだ序の口だった。
彼の部屋に遊びに行った時、それは色濃く出始めた。
リビングに座って部屋を見回すと
彼女が知っている1年半前の姿からはだいぶ様変わりしていた。
今まで聞いたことのないようなジャンルのCDやアーティストが結構な数置いてあった。
昔は着なかっただろう趣味の服や身に付けなかっただろうバッグもハンガーにかかっている。
前とは違うんだ。
そんなことは分かってはいたけれども、
いざ目の前にそれらしきものがたくさんあって、しかもそれが彼の部屋にあったりすると、
何となく自分だけのものじゃない気がして、
前ほどの幸せをその場所では感じられなくなっている自分がいた。
それにダメを押すかのように、
逆に彼が彼女の部屋に来たときも
彼は、何となく、居心地が悪いような雰囲気を出していた。
いつものように勝手にベッドに寝っ転がるようなこともしなかったし、冷蔵庫の中を漁ることもしなくなっていた。
全てが全て、同じ時間に戻るなんてことはないんだ。
同じなんて、ありえない。
「ちょっと話したいことがあるんだけど」
そう切り出してきたのは、彼のほうだった。
なんだろう。不安な気持ちがのろっと広がっていった。
「私も」そう返す。
ちょうどいいタイミングだから、私も聞いて欲しいことがある。
私も伝えよう。伝えたって何になるか分からないけど、このままこの感覚を抱えたままでいたくない。
「言いづらいんだけどさ、怒らないで聞いてほしんだけど」
その日、彼は彼女の目を見ずにうつむいたまま切り出した。
「どうしたの?」
「あのさ、何となく、気にしてしまうんだ」
「何を?」
「嫉妬がましいんだけどさ、自分がいなかった頃の相手のこと気にしちゃうっていうかさ。
着てる服の路線が変わったりとか、
料理のレパートリーとか増えてたりとか
部屋のレイアウトが変わってるとか
そういうの見ると、本当にすごい良いことなのに、いいねって褒めたいのに
情けないんだけど、変に考えちゃうんだよね。前の彼氏さんがそういう趣味の人だったのかなとか。
自分と別れていた頃のこととか、変に」
彼は、申し訳なさそうに、そう言った。
「ごめん、ごめんね、本当に今の関係には本当に不満とかじゃなくて」
彼は焦った。目の前にいた彼女が突然泣き出したからだった。
まずいことを言った。
自分がこんなに女々しい人間だと思ってショックだったんだろう。
「ごめん、今度からは気にしないようにするけど、ほんと、好きだから余計気にしちゃうと言うか……」
必死で言い訳になりそうなことを言う。
彼女は首を横に振る。
違うの、そうじゃない。
「私も、一緒だったから。同じだったから」
なんだ、一緒だったんじゃない。
お互い不安で、けどお互いみっともないからと言えないで、
お互い大切で、だから自分のものにしたくて
変えられない過去にも嫉妬して、敵わない過去の人に牽制なんかして
けど、そんなこと考えなくても、恋人は自分に一生懸命だった。
話すよ。あなたが話してと言うなら。なんでも話す。
それであなたの気持ちが楽になるなら。
それであなたが自分のことを好きでいてくれるなら。
それでもっともっとあなたが笑ってくれるなら。
それで今の私なんだから。
それで今のあなたなんだから。
それで、今、お互い好きなんだから。
全てが全て、同じ時間に戻ってこれるわけじゃない。
けど、同じ時間に戻れなくていい。
変えられない過去に喧嘩を売っても、現在は一ミリも動きはしない。
相手のことを知りたいという気持ち。知った上で受け入れたい気持ち。
受け入れて、現在からと向き合っていく。
「私も、知りたい」
彼女は、彼にそう伝える。
関連する記事
自分をふった男に復讐して彼女が気づいたこと - 人生かっぽ — 佐藤大地のブログ
彼女は昔の恋にすがりたいだけだった。結局 - 人生かっぽ — 佐藤大地のブログ
ヨリを戻しても彼女らがダメになったワケ - 人生かっぽ — 佐藤大地のブログ
書いた人のTwitter見てみる
Follow @daichisato88
Facebookフォローで情報受け取る方はこちら↓
毎日複数記事アップ中。このブログをフォローする。