柔軟剤が忘れられない
笑っちゃうようで笑っちゃいけない話なんですが
かつて「柔軟剤が、忘れられなかったんだよね」という理由で
別れた女性がいました。
今日柔軟剤を見ていて思い出しました。
ぼくがお付き合いしていた人ではなくて
ぼくの知り合いで彼氏のほうにせがまれて、
どうしても別れた理由を聞いて来て欲しいと
お願いされたことがありまして。
それで彼女のほうに「別れたんだって? どうして?」と
聞きにいくことになりました。
ぼくがたずねると、彼女はしばらく黙って
「柔軟剤」と。 ぽつり。
「柔軟剤? なにが?」と聞くと
「柔軟剤が忘れられなかったんだよね」と。
聞けば、彼氏と前の彼氏が使っている柔軟剤がおんなじだったらしいんです。
当然、そうすると、においがほぼ一緒で。
そのにおいがするたびに、どうしても思い出してしまうと。
そんなわけ、と思ったけどそれはあるんですよね。
ぼくもよく、人ごみの中で同じにおいがすると
好きだった人や前の恋人のことを思い出して
人ごみの中をちょっと探したりして。
だから
ああ、とそれ以上彼女には何も聞けなくなってしまって。
そうだよね、と。
においって一番長く記憶が保存されるそうです。
漫画『ハチミツとクローバー』でこんな台詞があります。
「時々思う…
声って いつまで覚えてられるんだろう
不安になって頭の中で何度も再生を繰り返す
思い出せる
まだ思い出せる
でも もし
このまま二度と逢えないとしたら
最後まで残るのは
姿だろうか
それとも
声なのだろうか」
『ハチミツとクローバー』 第5巻より
声ってすぐに忘れてしまうけど
においは何年も思い出していない人なのに
嗅ぐと、たちどころに思い出す。
ぼくらは忘れていけるから良いこともあって。
忘れられないってのはそれはそれで、うん。
こっからはぼくの想像なんですがね。
その彼女さんは、じゃあ付き合っているとき
手をつないでそばに寄っていたり
部屋に遊びに行ったり
抱きしめられたりしたときに
ずーっとその前の彼氏を思い出しながら
目の前の彼氏に向かって笑いかけていたのかなとか思うと
なんだかこれは誰が得してんだよと
わたくし張り裂けそうでなりませんでした。
柔軟剤、気をつけてください。
紹介した本。久々に一気読みしたくなった…