別れたのは「ひとりで生きていけそうだもん」と君が言ったから
もう結局どうしていいのかわからない。
といった感じだった。
「恋愛に答えがない、ということだけは分かった」
という彼の言葉が、悟ったようにも、悲しんでるようにも聞こえる。
だって一人で生きていけそうだもん。
別れようと切り出されたその日、「どうして?」とか「何が悪かったの?」とか質問して、彼女からしっくりしない返答をいくつももらって、また質問して、を繰り返し、てんやわんやと何かを言い合ってからの、その一言。
彼は結局その言葉を、彼女から恋人としてもらう最後の言葉にした。
その瞬間を、
二人の間に言葉が何も無くなったその瞬間を、
ぼくは想像する。
辛し。
ひとりで生きていけそう。
彼女のその言葉は本当にその通りで、彼はそれ以上何も言う必要がないと感じた。
別れよう。もう終わりだな。
そう腹の中で決めてから、落ち着いて聞いてみた。
なんでそう思ったの?ひとりで生きれそうと思ったの?と。
頼られているという感じもないし、私がどれだけ困ったり悩んでいても動じないでゆったりしている感じとか。
そういう感じが、「ひとりで生きれそう」につながったのだという。
もっと頼ったほうが良かったんだろうか。
もっと弱々しい男が良かったんだろうか。
どう思う?
とぼくは聞かれても、なんとも、なあ。
「弱かったら弱かったで、嫌われんだよ」
どっちつかず。
「弱い人が好き」なんて言う人を見たことが、ぼくはない。
けど、「頼ってほしい」ということはよく聞く。
「だって付き合ってるんだしさ」と。
じゃあ、あれもこれも相談して、失敗したときにダメだぁと連絡されて嬉しいのか、と言われると「そういうのはちょっと……」と言う。
むずかしい…
彼もその間で迷える子羊のひとりで、以前の恋愛で彼女にグチやら相談ばかりをしていた。
そのうち彼女が連絡を返さなくなり、それでモヤモヤして、ケンカして別れた。
彼女が悩んでいたときに、親身になって相談に乗るのがいいと思った。けれど相談に乗ったら乗ったで助言すると「そうじゃなくてさ」「なんで分かんないの」と怒られて。
だったらゆったりした気持ちで聞いてあげようと思った。
それが今度は、だ。
「頼られているという感じもないし、私がどれだけ困ったり悩んでいても動じないでゆったりしている感じが、ひとりで生きられそう」
と言われるのだから身もフタもないよなぁ。
そういう人が好きって言う人もきっと出てくるよ、な、となぐさめることしかできなかった。
けど、あいつが好きなんだよねー。
ぼくの言葉は彼にそう返されて、ぼくは次に返す言葉が見つからなかった。
はね返って来たことばがどっかに消えていった。
「いつかきっとめぐり合うぴったりの人」なんかじゃなくて
「あの人」じゃないと嫌なんだ。そう。
そのために、中途半端な人間になったほうがよかったんだろか。
ひとりで生きていけるって、幸せなんだろか。
人生をかっぽしよう
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