人生かっぽ

人生かっぽ —佐藤大地ブログ

哲学、言葉、人生観、仕事、恋愛、など人生をかっぽするような物語をつむぎます。宮城県 仙台市を主な活動拠点とする佐藤大地のブログです。2014年からEvernote公式アンバサダー。大学院では政治学を研究していました。

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佐藤ノート№17 〜1コマだけの脱獄犯〜

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二浪目の夏休みに僕はよく逃げた。
やりきれない気持ちを
ぶつけることができず
本屋まで歩いていって
1コマ分くらいの時間を
立ち読みに費やして
また自習室にトボトボと帰ってゆく。
本屋から街に出ると
はぁ、といつもため息ばかり出た。
周りに歩いている人間と自分は
外見上何も変わらないのに
自分以外の人には好きなことができて
自分にはそれができないのだから。

しかし、思ってもみれば
彼らよりも自分のほうがずっと自由だった。
予備校は義務教育でもないし
さぼったからといって
誰かにひどく怒られるわけでもない。
ただ自分の将来に関わってくるだけだ。

失敗したら

親には
出してくれた分お金を返せばいいし
期待をかけてくれたなら
ごめんと一言言えば
気が紛れるかもしれない。

自分にはそうはいかない。
使ったお金を取り戻しても
その一年は戻ってこないし
ごめんと言ったところで
虚しさが広がるだけだ。

世間で最も自由なのに
世間で最も不自由なのが浪人生。
いっそのこと
この自由をいくらかちぎって
義務と交換できればいいのに
なんてことを思った。
そしたら嫌々でも勉強にむかえるから。

逃亡の末に逃げ帰る場所は
悲しいかな
予備校しかなかった。
ペンを握って思うことは
確かにその手が
自分の未来も握っているということだ。

ペンを動かすと僕は未来に動いていく。
動かさなくても未来に動いていく。
だったら
ペンを動かした末の未来に行ったほうが
なんとなく僕っぽいし
なんとなく生きている心地がした。

大袈裟だけど
人生で初めて自分の人生を
握っている気分だった。
これが人生の重さか。
やってやろうじゃないの。
そんなことをぶつぶつ呟いては
自分からは程遠い
芸能界を満載した雑誌を閉じて
目の前の闘わねばならぬ場所へ
吸い込まれるように戻った。

闘い続けるなんて無茶だ。
たまには逃げなければ。
だけど
いつかは闘う日が来る。