「普通さあ」って言葉こそ偏見のカタマリ。そう気付かせてくれた先生の鋭すぎた指摘
どうしても、その人は自分が「普通」で、周りが「普通以下」と言わせたいようでした。
「じゃあ佐藤くんが、はい、こういうコピーとるとかいう普通のことすらまともにできない後輩にばっかり囲まれました、はい、それでも優秀なやつとそうじゃないやつの区別なんてないと言いますか」
自分の職場の現状を、ぼくに投げやるように言ってくる。
いや、気持ちはわかるんですよ。
だってぼくこそ言ってたわけですもん。
「普通はこれくらいさあ」とか。
ただ、あの日に考え直させられたんですもん。
「普通って何ですか?
佐藤さんにとって普通なことは他の誰かにも普通なわけではないんです」
って大学の先生に。
それは大学の先生との単なる議論だったのだけど、
その後、自分の考え方や言葉使いを改めるきっかけになる。
「日本人なら普通は大学行ってるじゃないですか?」
それに対して、先生は、ふむ、と一呼吸をおいて
「佐藤さんにとっての『普通』ってなんですか?」
と聞いてくる。
「それは、自分の環境での普通ってことではないですか?」
「行かないで働いているひとの存在は、どれくらいいるか知ってますか?」
「いや、知らないです」
「まずは自分の『普通』を、それは本当に普通なのか、調べてみることですね。
言い切るのはそのあとですね」
自分の視野の狭さに恥ずかしくなる。
なんだか悠々とひとのことを踏みつけていた気持ちになった。
「普通」「常識」「当たり前」
その言葉ほど疑わしいものもない。
そして、とくにこの日本にはそれが出やすい。
「普通」の多くは自分の「偏見」
たとえば、以下は「普通」です。
・日本の基本的人権の4種類の権利が言える。
・重力の単位がわかる。
・「あなたはアメリカに行ったことがありますか?」を英訳できる
・y=2x+5の直線の傾きが分かる
・「おくびょう」という感じが書ける
というのは、これらは義務教育で習うことだから。
ある意味で普通にできて当然のこと。
けど、すべてのひとがこれができるとは限りません。
こういう例ではなくて、
暗黙の了解のなかにも、たくさんのことがあります。
「普通仕事ないんだったら『仕事ありませんか?』くらい聞けよ」
ところが一方で、こう怒られたりもする。
「仕事ぐらい普通自分で探せよ」
こういうことが、ぼくがバイトをしていたときも、当たり前のように飛び交っていましたし
他のバイトや仕事をしている人のなかでも言われていました。
あとはUSBの使い方分からないひととかね。
まあぼくのバイト先なんてフロッピーも使ってて、
生まれてこれまで見たことないからってUSBよりもフロッピーのほうが最新技術だとマジで思ってた学生いたんですけど。
まあ、こんなふうに
日本は「みんな日本民族」とか考えがちで、とくに暗黙の了解が多いところなので、
マナーや能力の部分で考えると
こういう「普通」「当たり前」があふれかえっていますし、
このマナーが人によって矛盾したりするからさあ大変です。
そして、その普通ができていないと、がっかりされる。
一般常識とは、18歳までに身につけた偏見である。
Common sense is the collection of prejudices acquired by age eighteen.
アルベルト・アインシュタインはこう言いました。
common sense のここでの翻訳については、ここでは深く突っ込みませんが、
当たり前だよね、とか、普通は、ということは、18歳までに身につけてきた、自分がそう思い込んでいる偏見なわけです。
だから、これを疑う必要が有る。
「本当にそうなのか? 普通なのか?」
と。
発見として捉えたい
何かを学ぶときの「普通」という偏見とは違って
他人に対して普通を求めてしまうときは
「普通」が相手への「期待」と化してしまいます。
そういうわけで、ぼくは
イライラする前に、発見としてとらえるようになりました。
「それくらいまでできて欲しい」と考えている自分がいるんだということ
それくらいができない相手がいるんだということ
こういうことを「発見」したんだと、まずは解釈するわけです。
判断するのはそのあとにする。
「そもそもこいつに見込んでいた期待と違った」と低評価するも良し。
「これができないのか、こいつは気をつけて見ていこう」とか
「これからこの部分を強化していく必要があるな」とか。
自分の物差しではかってすぐに判断するのではなく
相手の物差しではかり、そこから自分の評価を下すわけです。
そうすれば、ある程度冷静に評価や判断できる。
***
怒りにまかせて人の不出来を責めたくなったら、一度問いかける。
「それは本当に普通か? その人にとっては?」
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