今年の冬の朝、ファーストフード店の開けては閉まるを繰り返す自動ドア近くで勉強をしていた。店に入る風が冷たかった。強制的な勉強はとても嫌いで、ストレスも溜まるし、就活もあるし、ものすごくイライラおばさんだった。東京と仙台の往復を繰り返すし、お金はそんななくて、でもそんな冬はあったかくておいしいものが食べたくて仕方なかった。
Vegetable Dolsot Bibimbap - unmixed - Goshen / avlxyz
この記事はゲストライター記事です
(文:Kanami Yoshida 画像選定:佐藤大地)
そこで駅近くの百貨店なのかショッピングセンターなのかよくわからない地下の韓国料理店でビビンバを頼んだ。そのお店はキムチ等のお持ち帰りが主なのだけれども、カウンターが5つくらいあってそこでは食事もできる(後で食べログを見たら意外と評価が高かった)。韓国人女性の方が2人でお店をまわしていて、石鍋でごはんがジリリと焼ける音が心地よくて、思わず入ってしまった。なんせ、キムチの持ち帰り販売が主のお店であるから、カウンター席はほとんどくつろげる場ではないし、一応つい立てとかあるけども、1メートル後ろはまた違うお店なくらいひしめき合っていて、居心地が悪かった。そんな中で私は、石鍋の音に耳を傾けるようにしていた。
客は働いてる女性の割合が多かった記憶にある。皆お昼休みなのかな。急いでビビンバを口に全て運び、颯爽とオフィスに戻る姿はなんだかキュンとするものがあって。そんな中で、ひとり50代くらいのかわいいおばちゃんが隣に座ってきた。ものすごく愛想が良くて、わたしにやたらニコニコしてきた。めちゃめちゃに小さい店がひしめき合う居心地悪いビビンバカウンターの雰囲気が、少しだけど良く改善されたような、何かを感じた。それから先に私のビビンバセットが目の前に現れた。実際に現地の人が作っていると、騙されやすい性格なのかなんなのか余計にとってもおいしく感じた。少し経つと、隣のかわいいおばちゃんのビビンバセットも運ばれてきた。2人でおいしいねって言いながら食べるビビンバは本当においしかった。ふと、おばちゃんが、「私ね、午前中すごくいやことがあったの。だからね、おいしいもの食べようって思って。やっぱりおいしいものっていいね」と、こぼした。
今日もそのショッピングセンターは若干照明が暗いし、エスカレーターは古びていて変な音するし。地下街はアングラ感やばいし。おばちゃんがその言葉をこぼした瞬間すごくすごく、胸がきゅーっとした。上手い言葉は返せなかった。「うん、そうだよね。おいしいもの食べるのが1番ですよね。」本当に普通のことしか言えなかった。色々話して、少し冷えちゃったおまけみたいなわかめスープを一気に飲んで、おばちゃんとバイバイした。また、あのおばちゃんに会えるなら会いたいなと思った。おばちゃんがビビンバを食べ終える頃には、少しでも元気になっているだろうか。悶々と考えながら歩いていると、翌日に出発する東京行き、高速バス予約の確認メールが来た。切なさとか頑張らなきゃとかビビンバおいしかったとか寒いなとか、色んな思いを、両手でほっぺたをぎゅーっと押しながら、次の日のエネルギーに変える青葉通りだった。
(文:Kanami Yoshida 画像選定:佐藤大地)
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