人生かっぽ

人生かっぽ —佐藤大地ブログ

哲学、言葉、人生観、仕事、恋愛、など人生をかっぽするような物語をつむぎます。宮城県 仙台市を主な活動拠点とする佐藤大地のブログです。2014年からEvernote公式アンバサダー。大学院では政治学を研究していました。

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別れる理由を「こうなる運命だったんだ」なんて言う人たち

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「結局こうなる運命だったのかなあ」
とその人は、別れそうな自分を嘆く。

「いっつもこうなんですよ。
 いっつもこういうふうになって結局ダメになる」
また別の人はこうも嘆く。

「ああ、もう恋愛したくない」


そういうシチュエーションによく遭遇する。
自分を悲劇の主人公に仕立ててしまう人。


じぶんがそうだったから、よくわかる。


おまえはダメになると悲劇の主人公になりたがる

紅天狗ダケ
紅天狗ダケ / pika1935


その人の言葉が、響いた。




そのとき、ぼくは失恋からしばらくしているのにまだ立ち直ることができずに、
飲んでいる最中に、横にいるその人に愚痴をこぼした。
ぼくがいつも頼りにしている兄貴分の人。


いつもじぶんが恋愛をするとこうなる。
その人をダメにしてしまう。
じぶんのことで悩ませて
じぶんのことでいろんなこと犠牲にさせて。


もう恋愛とか、無理ですわ、こんなんじゃ。


そういうふうにグチっていて。


彼はいつもそうなのだけれど、
そうやってぼくがグチグチ言っている間、
黙って聞いてくれている。



ぼくがある程度グチり終わって、ため息ついでにうなだれると、
大丈夫だって、と優しい言葉をかけて、
それから、


「おまえはさ、なんか困るといっつもそうだよな
 ダメになるとじぶんのことを悲劇の主人公にしようとしてないか?」


とだけ、言って、
あとはまた
「何か話したいことあったらどうぞ話して」
というモードになった。


その言葉は、どこか響いて。

その言葉はさすがにぼくには辛く、重たく、だから受け取りづらく


「だってそうじゃないですか」

もう、とすねるように言いかえしていた。

「それはそれ、これはこれ、じゃない?
 そのときの彼女はそのときの彼女だし
 このときの彼女はこのときの彼女だし」

手厳しいことを言うとき、
彼はいつもきちんきちんと受け取りやすいように言ってくれる。

「おまえ、調子いいときは調子いいときで
 『今度の人とはちがう』って張り切るのに
 だんだん雲行きあやしくなってくると、
 いやあ、またあの悲劇が……ってそっちのほうに
 なんか、じぶんから行こうとしている気がするんだよなあ」



そう言われて、何も言い返せなくなる。

たしかに、そうだったから。

「ほんと、それ、って感じっす」


『オイディプス』になり始めようとするじぶん

しいたけ
しいたけ / typester


オイディプス王』という話があって。


じぶんの悲劇の運命から逆らおうと一生懸命逃げても、
けっきょくその運命通りになってしまうという話。
父を殺し、母と交わる。
そういう悲劇の運命。

主人公は、失意のうちに
「もう何も見たくはない」とじぶんの目をついて、
何も見えないようにする。


ぼくは大学のときに読んだこの話がどうにも記憶に残っている。

そのときは何の気なしに気に入ってただけ。
けど、気づけば(いつからか分からないけども)
じぶんはこのオイディプスみたいになっていたんだと知って。

「ああ、またこれでこじれちゃう」
「ああ、またこの前の人みたいになっちゃう、おれのせいだ」

うまくいかなそうな未来を目の前に見ると
悲劇の主人公にじぶんを仕立てあげ始める。

どっちにしても、じぶんは主人公がいい。

だから、ハッピーエンドの主人公になれないなら、悲劇の主人公でもいい。


そうやって、じぶんを悲劇の主人公にしていたのはじぶんだった。


まだ決まってもいない未来のじぶんと、大切な人の未来に、
もがこうともしない。


「どうせこうなる運命だったんだ」


まだタイムリミットが残されているのに、
かっこつけて、相手のために、そしてこの先のじぶんのために
もがき続けることではなく
どうしようもない悲運に嘆くじぶんを演じることに時間を使い始める。


そんな人間に、ハッピーエンドのひとかけらの可能性が生まれるはずもなく。


じぶんがハッピーエンドの主人公だろうが、悲劇の主人公だろうが
そんなもんはどっちだっていい、結果は結果としていずれ訪れる。

過去は過去。未来は未来。
過去の関係は過去の関係。未来の関係は未来の関係。
あの人はあの人。この人はこの人。


「どっちになろうが、いまやれるだけのことをやったらいい」


そうやって、ぼくは悲劇の主人公になりたがっていたじぶんと、はじめて向き合えたんです。




 ***


「結局こうなる運命だったのかなあ」

「いっつもこうなんですよ。
 いっつもこういうふうになって結局ダメになる」

そうしたいと決めたら、これからもそういう物語になっていくだろうし
そうしたくないと決めたなら、少しずつ物語も変わっていくんだと思います。


大切なのは、いま、持っている可能性を、どうするか、どうしたいか。
やれるだけやるも、嘆くだけ嘆くも、よし。


物語なんか、誰かが語ればいいだけの話。



人生を、かっぽしよう
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