長所は短所 短所は長所
「才能を一つ多く持っていることのほうが、 才能が一つ少ないよりも危険である。」 フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ 「あなたの長所を教えてください」 この質問は、僕が仕事をしていた中で、面接官という大役を任せていただいたときにいつもしていた質問の一つです。 自分の長所は? 長所は短所、短所は長所 僕の特技は、話し上手だということです。 ただ、段々と煙たがられる頻度が高くなってきて、さすがに自分のせいでもあるのではないかと思い始めました。 僕はそれを読んで、自分の行いを批判されていると感じました。 そこで思ったんです。 けれど、見方を変えてしまってそれが短所であり、害だと判断してしまうと、取り除こうとしてしまう人がいます。 また、今短所だと思っていることも同じことが言えます。最初から短所だと思っているからと言って、それがどんなときでも短所とは限りません。長所も見方を変えれば短所になるのですから、その逆も同じことです。 大事なのは、長所と短所をよく観察するようにつとめ、どんな時に、どう振る舞うか、それらとのつきあい方をしることだと思います。 長所と短所をよく見つめれば、自分の中でどう行動すれば見てきます。
というと、結構な数の人が回答してくれる。
けれど、僕は次にこう訊く。
「では、その長所を短所にしてみてください」
すると、面食らったようにして、回答できなくなってしまう。
自分の短所は?
こう訊かれれば、何となくでも答えられることだが、先の質問の形になると、これらと似ているようだけれど、回答率はとたんに低くなります。
というのが、僕のよく口にすることです。
僕は、ほんの最近まで長所を増やしていけば有能な人間になれるのだと信じていました。
しかし、そうではないと思うに至りました。
大事なことは、自分をよく見つめるということだったのです。
何も過信しているわけではなくて、他の人たちから、評価を得て自信を持ったのです。
それを誇りにしていましたが、高校生くらいになってから、自分が話すと時折家族や友人たちの反応から煙たがられていることを知りました。
「自分は面白い話をしているのに」
話し上手であることを誇りとしていた僕は、話を訊かない家族や友人たちのせいにして、自分の話をわからない人たちとして解決していました。
それで、話し上手になるためのハウツー本なんかをたくさん読んでいると、「話し上手は聞き上手」というようなフレーズをたくさん目にしました。
そして本の中には、「どんなに話が面白くても、自分ばかりが話しているだけでは、さすがに相手も飽きてしまいます」と書かれていました。
話し上手は自分の長所だと思っていたのに、それが悪影響を及ぼしていたんですね。
自分の話が聞かれないことを他人のせいにしていましたが、他人からしたら、僕がその人たちのことを考えない行動をしていると目に映ったでしょう。
「ああ、長所ってのは、同時に短所でもあるんだ」
と。
長所って、プライドの一番固まっているところです。プライドが固まっているからこそ、そこだけは負けないと発起するのですが、同時にそれが害であることも忘れがちです。プライドのせいで、少しでも悪い評価をそこに加えたくないんですよね。
取り除いたら、結果、その人は何も残らなくなりはしないでしょうか。
もともとは長所だったわけですから、害だと思って取り除いた結果、それは長所を捨てていることと同じです。
刀を例に挙げて言いましょう。
刀はどこでも切れるわけではありません。刃では切れますが、その反対の峰では切れません。
切ることも大切なのですが、いつでも何かを切りたいわけではないでしょう。その人を殺したくはないけれど、抵抗してほしくない時。そんな時は、刃ではなく峰を使うことができます。
大事なことは、刃をどんなときに使えて、どんなときに使えないか、そして使えないときにどうするかを考えることです。
長所と短所をよく見つめるということは、結局は自分をよく見つめるということなんです。