四年の恋愛というのは大きい。
ああ、と彼女は思う。
ノートの間に挟まっていた映画の半券がふと落ちてきたから。
一体にして、どっからどこまでが自分のものか相手がくれたものか分からない。
別れてしばらく経つのに、気を抜くと昔の彼氏の面影がひょっこり顔を出して困らせてくる。
拾い上げた半券を、しばらくどうにもできず、何となくまた戻す。
捨てなかったのは、彼に気兼ねしたわけじゃない。もはや自分の思い出でもあったから。
四年というのは、でかいんだよ。
「さっさと忘れなって」と友人に言われた。
自分なりに踏ん切りはつけたつもりでいた。
踏ん切れてないのかな、ホントは。
そう思ったから、大学を卒業してからは新しい恋に挑戦しようとした。
けど、すぐにダメになった。ふったりふられたり。
ダメになるのは色んな理由があった。
あんまり話を聞いてくれないと言われたこともあったし
掃除がきれいになっていないことでイライラされたり
遅刻が多くて怒られたことがあったり。
どれだけ頑張っても長く続かないから
もはや友達関係が充実していればいいような気がしてきていた。
正直なところを言えば、別れるたびに、彼を思い出したりした。
よく話す性格の自分も、彼はうんうんといつも聞いてくれたし
部屋が少しばかり汚くても、笑ってくれたりしたし
時間にルーズでも、まあいいよ、と許してくれていたし。
「わたし、3年付き合って、ダメになったんだよね」
あるとき会社の飲み会で、同期の人が彼女の横でそうこぼした。
自分ほどではないものの、十分、長い。
「長いね」自分のことは話さなかった。
彼女の3年を忘れられないような様子を見て、どこか一緒にしてほしくないと感じていた。
忘れられないんだと同期は言った。思い出のものも、ちょっとだけ捨てられないで残している、と。
苦しい。自分もおんなじだ。
酔いが回ってきたのも手伝って、同期はぼろ、ぼろ、と本音をこぼし始める。
あんなに尽くしてくれる彼もいなかったと思う。
自分が悩んでいるときは話だって聞いてくれたし、疲れてる時はご飯も作ってくれてた。
一緒に旅行に行ったりするといつも楽しかった。
感性が似てるから、プレゼントに買ってきたものがいつもドンピシャだったんだ。
それから、それから……
「もっといい人いるから」
本音をこぼし続ける同期に彼女は我慢できなくなったのもあって元気づける。
すると同期ははねのける様に言い返してきた。
もっと、とか無いんだ。わたしはできるならまた、ああいう人がいい、と。
そして
3年間は大きいんだよ、と。
そのとき、彼女はショックなのか悲しいのか怒りなのか分からない感情を持つ。
これは自分じゃないのか。
3年とか、4年とか、そういう大きな大きな過去の安心感にどっぷり浸かって、
この先の未来は不安定だからってすぐにまたそこに戻って。
あのときはこうだった、あのときはこうだった
結局うまくいってた過去を引っ張り出してきて自分は変わらないと決め込んでる。
だってこういう自分を彼は受け入れてくれたからって。
そういう自分にさえずるずるすがってばかりいて。
そんなの、一番見切り付けられてないじゃないか。
もしかしてまだ待ってたんじゃないのか、彼が迎えに来るって。
わたしは思い出にすがって生きていきたいわけじゃない。
思い出にわたしを受け止めてほしいわけじゃない。
そこから彼女は、彼を意識してしまうものは全て捨てた。
自分の思い出だろうが、また行けばいい、と燃えるゴミに出した。
4年はでかい、と彼女は思う。
けど、もうその4年はない。
だけど、この先は、もっと長い年月があるはずだ、と彼女は思うから、恋をする。
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