たぶん、あなたの人生を変える言葉はインド料理屋で見つかる【『二度寝で番茶』Kindleセール】
血肉になる言葉っていうものが、人生を通して存在する。
それは何度も何度も読むことで、口癖になり、思考の癖になり、一挙手一投足にまで染み込んでいく。
けどそういう言葉って、いつだって日常の草っ原に隠れていることが多い。
『二度寝の番茶』
を読んでいると、そういう言葉にたくさん出会う。
筆者はシナリオライターとして『野ブタ。をプロデュース』『セクシーボイスアンドロボ』『Q10(キュート)』などの作品をつくりだした木皿泉さん。
この木皿泉さん、何が面白いって、夫婦二人で一人のシナリオライターとして活動している点。
この『二度寝の番茶』をめくると、日常の片すみに落っこちていそうな言葉たちをたくさん見つける。
たとえば行きつけのインド料理屋で。
たとえば洗濯物を干しているとき。
たとえばワイドショーを見ているとき。
きらびやかな言葉で刺激されるわけではない。
けれども、その言葉を読むと、まるで排水溝の詰まりを起こしていた一本の髪の毛を抜くかのように、思考はどうどうと始まる。
こういう体験って多くの人がけっこう実感あることだとおもって。
そういうとき、ぼくらはふとコンビニにでも走っていきノートを買って、ペンを握って
言葉を発したり、言葉を書きたくなる。
文章なんて、これっぽっちも上手くないのに。
たとえば、退屈な毎日だと思うなら、「気まぐれな店」を読んでほしい。
主人がいなくなっても、カレーやラーメンは、あいかわらずおいしかったが、私はやがてその店に行かなくなってしまった。バイト君は何も変えようとしなかったからだ。
(中略)「どこかへ行きたいなあ」と空を見上げて、この気まぐれな主人のことを思いだす
たとえば、人間関係がわずらしくなったのなら、「誰かを想う」を読んでほしい。
気づかぬうちに、何かをしてもらったことが引け目となって積み重なってゆき、その人にあらがえなくなってしまう。情にからめとられる、というのはそういうことだ。
そうならない方法はただ一つ。「ありがとう」を言うことだ。感謝の言葉が届いた瞬間、やってもらった側もやった側も、気持ちは空へきれいに消えてゆくような気がする。
たとえば、仕事について悩んだとくは「初めての仕事」を読んでほしい
十年の間OLやってきた私にとって、仕事とはミスをしないこと、早く処理をすることだった。なのに彼らは、何回も何回も録りなおす。今できる最高を求めて、それぞれがありったけの能力を絞り出していた。そうかこれが仕事か、と私の頭の中で一挙に何かが崩れ落ちた。
そして人生に考えたとき。
コンビニではいつも同じ物が売られている。電車は年中、同じ時間にやってくる。
(中略)
私達は待つということをしなくなった。放っておいても、今日と同じ明日がやってくると思っている。
その他にも、お互いを「大福」「かっぱ」と呼んで対談するパートもある。
そこにも、日常の中で見落としがちな言葉たちがたくさん見つかる。
***
ぼくらは日常とその中の言葉に少し刺激物を求めすぎているのかもしれない。
血肉をつくりあげるのは、あんがい簡単で、さっぱりした言葉なのだろうと思う。
日常の中で、意味のない断片をなんとなく探し求めて、それがふとした瞬間につながるのを待っているのだと思います。
木皿泉さんのゆるりとした世界観、おすすめです。
『二度寝の番茶』は2015年12月28日の1日限定Kindleセール対象商品(199円)。
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