人生かっぽ

人生かっぽ —佐藤大地ブログ

哲学、言葉、人生観、仕事、恋愛、など人生をかっぽするような物語をつむぎます。宮城県 仙台市を主な活動拠点とする佐藤大地のブログです。2014年からEvernote公式アンバサダー。大学院では政治学を研究していました。

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遠距離恋愛にしてんのは、お前の心の距離だろ

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「遠距離って難しいよな」
と彼は言いました。

「彼女が最近大学に対して気持ち萎(な)えてて。
 大学辞めたいとか言い出して何て言葉かけてあげていいか」
ぼくと友人KとNが学食のテーブルに座りながら話をしているとき。
Kがそんな話をテーブルの上に乗せたのが始まりでした。


遠距離は難しいとか、
遠距離は辛いだとか、
距離が生み出す悪いことはたくさんあって。


けど、同時に距離が言いわけになっていることもあって。

距離があるから、できない。
それは地図の距離なのか、気持ちの距離なのか。
どっちなのか。

彼の場合は、地図の距離が問題ではありませんでした。


Pizza Rustica
Pizza Rustica / pizzamasetti

「けっこうそういう時期もあるよね」
ぼくがKを慰めるように声をかける。


「あんまりそういうこと言う人じゃないからさ
 おれもびっくりしてんだよね」
「マジか、それ本当にヤバいんじゃないの」
「だから昨日も夜遅くまで電話してたんだけどね」
「こういうとき、遠距離は大変だよな」
「マジで大変」

大学に入るまでそばにいたKとその彼女。
大学は仙台と東京で、彼女は東京に行ってしまっていました。


それまでたびたび
会えない辛さとか、彼女が悩んでいることとか
そんな話をしていたのですが
その日の話は今まで彼女の話を聞いてきたぼくからすると
かなりやばい、というわけではないものの
そこそこ深刻そうに聞こえました。


「電話はしてまあ、気はラクになってるみたいだけどね」
「じゃあ、まずは安心だよね」
「けどなんか、歯切れ悪いんだよね、ずっと」
「まだ悩んでんのかな?」
「そうかも。
 なんかこの気分のまんま別れられんじゃねえかなー。
 こえーなー」


「ねえ、N、どう思う?」
とKがマンガを読んでいたNに話かけると
Nがすっと顔を上げて


「いやお前、遠距離大変っていうけどな
 ちゃんともっと彼女のそばにいてやれよ?
 いてやれるんなら」
と言って、またマンガに視線を戻す。

「いやいや、お前、ここ最近毎日電話してるから」
「そういうことじゃなくてさ」
いつもぶっきらぼうな受け答えのNだけど
このときばっかりはKは少しシャクに触ったみたいでした。
だから、ぼくが笑って間に入る。


そしてNがまた顔を上げて
「貯金いくら?」と聞くと
「10万ちょいくらいだけど、なんで?」とK
「新幹線代いくら?」とN
「東京までは片道1万ちょいかな」とK


「行けんじゃん」
とN


学食
学食 / sqm



「行ってやれよ」
今度は強い口調ではなく、Nが言う。


「彼女、大変なんだろ?
 今行かないで、どーすんだよー」
Nの言葉に今度はだまりこくってしまったKを見て
ぼくは空気が悪くならないように、笑って間に入る。
もはや笑うことしかできない。



「おれ、前の彼女と遠距離で」とNが言う。


「最後別れ際、
 『結局、距離のせいにしてただけじゃん』
 って言われたんだよ。
 それは、辛いぞ。
 だから、行けるんだったら行きなよ
 数万ぐらいケチると後悔するよ」

それを聞いてぼくは
あ、だからこんなに強めに言ってるのかもしれないと思う。
自分が同じ失敗してるから。


Nは言う
「遠距離にしてんのは、お前の心の距離じゃないの」


それでも静かなままのKを見て
ぼくはヤバイと思って
なんだよーお前の昔の話かよーとか
ふざけにかかっていたのですが


Kの口から出た言葉は
「おれ、ちょっと行ってくることにするわ」


「どこに?」
まさかと思ってぼくは聞く
「東京。新幹線で。今からなら夜には着くから」

そそくさと立ち上がって
ほんとに学食を出て行ってしまいました。


Care for a slice?
Care for a slice? / TESFox


実は地図で考えれば同じ距離でも
行ったことないなどの気持ち的な壁を持つ場所には
実際よりも遠さを感じて足が遠のくという心理的効果があるそうです。


遠距離、遠距離、と言って
実はそれほど距離なんて障害じゃないときもあって
どっちかと言えば
自分が気持ち的に距離を
遠くしてしまっているときもありそうです。



Tea for two
Tea for two / naama


「明日の2コマには戻ってくるから」
それだけ言い残して、Kは東京行きの新幹線に乗り込みにいきました。



「あいつ、いい男だな」とN
「たしかに」とぼく
「あそこまでやるとは思わなかったわ」とN
「たしかに」とぼく
「帰ってきたら飲みぐらいはおごってやるかあ。
 たぶん、金なくてひいひい言ってるしな」
「そうだね(笑)」


ぼくらは距離なんてものともしないイイ男を
あんまりイジメないために、おごることにしました。



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