“罪滅ぼし”の恋しかできないかもしれない、結局、ぼくらは、
「ねえ、3人目に付き合った人と結婚するんだって」
彼女が嬉しそうに彼の顔をのぞき込んで言う。
「わたしたちお互い3人目だね」
と嬉しそうに言っている。
彼は照れ隠すように笑う。
「そっか」
うまく笑えた、そう思えた。
世の中の付き合っている真っ最中の二人には
言った後でよくよく考えれば
重いとでも思ってしまうことも
振り払ってあまりある力があります。
彼女と彼も、そんな感じでした。
ただ、ひとつだけ
彼は嘘をついたのです。
ほんとは3人目じゃなくて、5人目ということ。
どうして付き合って3人目で結婚するんだろう。
「3」という数字は、
「バランスの良い数字」の代名詞。
右でも左でもなく、真ん中。
あの日でもその日でもなく、この日。
あの人でもその人でもなく、この人。
メトロノームの右と左を行って
ちょうど良く、真ん中に落ち着く。
そんな感じ。
きっと恋愛でもそうで
一人では右も左も分からずに
二人では分かった上で嫌なことも見えて
三人目で、酸いも甘いも知って受け入れる。
そんな感じ。
そもそも彼から近づいた恋。
今思えば、彼女の
ちょっと人に対して不信感を持っている感じが
社交的でたいていの人とうまく行く彼にとっては
放っておけない存在だったのかも。
ご飯やお茶に誘うようになり
少しずつ、少しずつ
彼女は彼に心を開くようになり
色んな悩みを話すようになって。
「次の恋では、失敗したくないんだよね」
彼女は彼にそう言いました。
「彼の欲しいときに連絡してあげたいし
気にかけてあげられるようになりたいし
記念日だっておぼえてあげられるようになりたいし」
その頃にはお互いにお互いの気持ちが大体分かっていて
だからその言葉も
彼には自分に向けられた決意として受け止めました。
ただ、誰とは言わなかったけれども
彼女のその決意には
仲良くなるにつれて話してくれるようになった
大切だったけど手放してしまった恋の後悔も
うっすら乗ってしまっていることも気づいていました。
Tokyo, night view like a miniature landscape. 箱庭的東京夜景 / T.Kiya
そう彼が言ったのは、
彼女の言葉からしばらくしてからでした。
「おれが嫌な思いはさせないから。幸せにするから」
お互いがお互いに色んな経験をしてきたから
連絡ひとつ取っても
お互いに心地良い部分が分かったし
初めての恋人だったらきっと
行き届かないだろう配慮もできていました。
ただやたら
旅行行こうよ、ここ絶対楽しいよ。
と言うように彼女が旅行を誘ってきて
彼はそれほど外に出かけたくないと言っているのに
彼女が、そんなことないよ、楽しいよ、と言って来るのは
前の恋で果たしてあげられなかったことを、
彼で果たそうとしているのも知っていました。
罪滅ぼし。
次第に彼が彼女を見るときには
そんな言葉ばかりがよぎるように。
そしてあの日、あの言葉。
「ねえ、あたしって付き合って何人目?」
彼女がそれを
いたずらっぽく笑って訊いたとき
彼は彼女が答えとして
何を求めているのかを知っていました。
だって彼女は忘れているかもしれないけれど
その話の結論を、
彼女は彼の前で一度話をしていたから。
そのときはまだ関係も浅くて
「そういう話もあるよ」くらいで言っていたから
彼も何も答えず、彼女も忘れていたんです。
それで、ありったけ自然に彼は言いました。
「3人目だよ」
君にとって、都合の良い3人目になろう。
罪滅ぼしの、3人目。
きっと、恋愛は
色んなコミュニケーションの
試行錯誤のカタマリだし
つまるところ今の自分との恋愛は
相手にとっては
“今までの経験の総決算”
みたいなところもあります。
そこから考えると
“罪滅ぼし”になってしまうのもしょうがない。
ただ、それでも。
それでもやっぱり
僕を通して「罪」を見ないで欲しい。
彼はそう思ったのです。
ぼくの、友達の話。
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