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人生かっぽ —佐藤大地ブログ

哲学、言葉、人生観、仕事、恋愛、など人生をかっぽするような物語をつむぎます。宮城県 仙台市を主な活動拠点とする佐藤大地のブログです。2014年からEvernote公式アンバサダー。大学院では政治学を研究していました。

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今の恋人とあんまり観ないで欲しい映画『ナラタージュ』【感想 ネタバレ注意】

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忘れられない人ってのは
誰でもひとりはいるもので。
どれだけそいつが
ズルい人でも、
理不尽でも、
やっぱりそれはそれとして、ひとつのたしかな記憶として残る。そんな人。
いるいる。
いますいます。
ええ。


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映画『ナラタージュ
舞台挨拶の生中継観れるチケット取ったのに
結局もろもろありまして、間に合わず、レイトショー。
いえす、安定のレイトショー。

けど、レイトショーで観れて良かったなあ。

原作は読んでません。

原作は島本理生さん。
「この恋愛小説がすごい! 2006年版」(宝島社)第1位
本の雑誌が選ぶ上半期ベスト10」第1位
2006年の本屋大賞で第6位に選出

ナラタージュ (角川文庫)
島本 理生
角川書店
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作品自体について:それはまるで昼寝の夢のように静かに進む

映画『ナラタージュ』あらすじ

工藤泉は雨の降る日、会社で過去を思い返していた。

大学2年生の春。
泉(有村架純)のもとに高校の演劇部の顧問教師・葉山(松本潤)から、
後輩の為に卒業公演に参加してくれないかと、誘いの電話がくる。
葉山は、高校時代、学校に馴染めずにいた泉を救ってくれた教師だった。
卒業式の日の誰にも言えない葉山との思い出を胸にしまっていた泉だったが、再会により気持ちが募っていく。
二人の想いが重なりかけたとき、泉は葉山から離婚の成立していない妻の存在を告げられる。
葉山の告白を聞き、彼を忘れようとする泉だったが、ある事件が起こる―。

youtu.be


ナラタージュ
「ナレーション」と「モンタージュ」という言葉から作られたその言葉は
ナレーションの語りによって進んでいく劇の作りかたのことを言う。


そのことばよろしく、
作品は、雨が降る日の会社で工藤泉が過去を思い出すことから始まる。
それは昼寝の夢のように、
まとまりなく、
断片的に、
けれどはっきりとした記憶として一連なりの記憶として立ち上がる。


作品としては少しマンネリと感じるかもしれない。
起承転結の大きいジェットコースター型のラブストーリーを求める人には向いてなくて
静かに始まって、静かに閉じていく、
昼寝の夢のように静かな、そんな映画。

劇中で葉山が好きな映画がとても静かだった、という語りがあるんだけど
まるで本作がそれにインスパイアされるみたいで。


けれど、最初の印象はそれほどグアッと記憶に強く残るものじゃなくても
頭のなかでなんども噛み締めるほどにじわじわくる作品というのは、ある。

音楽で言えばぼくとってそれは
RADWIMPSの『セプテンバーさん』で。

そういう、一度観た後に、しばらく頭の中で繰り返されるような、そんな作品でした。


あとね、松潤がダサいんですよ。
ほんとにダサい。

;

目力をあそこまで消せるってすげえよなあっていう。

かっこいいとことか、まあ、あるっちゃあるんですけど、
そこまでキュンキュンっていうか
まあ普通の男の良さみたいな。
それくらいで収めてんのってスゴイよね。
ぼく松潤だったら収めることなんてせずに溢れさせてるもんね。



どれだけズルい過去でも過去は過去

葉山という男はズルい。


工藤泉からの気持ちが自分のほうに向いているのにもかかわらず、
自分からは何も伝えず、けれどたまに電話してきたりして、
何も思ってないわけないじゃないかとか言ってきたりして

工藤泉が一生懸命に過去の思い出から自分なりにケリをつけようとして
小野(坂口健太郎)と歩んでいこうとするのに
それをまた戻すようなことをしつつ、
なのに君は僕を忘れて幸せになってくれみたいなことを言い続ける。


youtu.be



これは、つまり、卑怯な男の手口だ。

相手が自分のことを忘れていないし、
自分のことを大切な存在だと思っていると確信しているからこそ
まーた電話したりして、自分を忘れないでと言うかのように振る舞う。

自分が現在とか未来に向き合えないから
泉を過去にもう一度引きずり込もうとする。


葉山という男に、どんな過去があろうとも、どんな足かせがあろうとも
ズルイっちゃズルい。

ただ、
その「ズルさ」ってのは
結局のところ、第三者が見ればってことだ。


どんなにズルい過去だろうと、ズルい恋愛だろうと、
お互いの気持ちがたしかにそこにあったなら、
そしてそれがたとえ過去のものになってしまったとしても
過去は過去として一個の大事な恋愛なのであって、
それは誰に正しいも間違っているもズルいもキレイも言われる筋合いのないものになっちゃう。


【関連】
「好き」に理由なんてないほうが幸せなのかもしれない。彼女が言うように。 - 人生かっぽ —佐藤大地ブログ


ぼくだって、今思い返せばけっこう理不尽な恋愛していたなあってこともあるし
理不尽に「好き」だの「もう好きじゃない」だの言われて振り回されたこともある。
逆に、
振り回したこともある。

けれど、そんな理不尽な恋愛も、ぼくにとっては記憶は記憶で。

その人を思い出すと、今でも決して新しい記憶ですっかり塗り替えられるような
記憶じゃないんだと思う。

その人は、その人なんです。

だから、将来たとえば大切な人ができたとして、
決してその記憶の上に自分の記憶を塗らせる暴力を振るわないであげてほしい。
いや、すごくキツイことは百も承知なんだけどさ。


あなたの大切な人がそういう記憶を持っていたとしても
できることなら、どうかその記憶はそれとして大切なさせてあげてほしい。

大丈夫、過去は過去で、きっとまた現在に戻ってくると思うので。





レイトショーを見終わると、外はなんとまあタイミングよく雨でして。



帰りの車で、思い出したのは、
自分にとっての大切な記憶たち。

だからおすすめしません。
ナラタージュ』は今の恋人と二人で行くことは。



人生を、かっぽしよう

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