最後
最後ってのが近づくと、最後なんか来なきゃいいって思う。
最後が見えないと、早く早くって思う。
それは本当に何にでも言えてしまうかもしれない。
昔聞いた、そんな言葉を思い出す。
生きていれば、きっとどこかで会えるさと分かっているけれども、
それでもまた明日も、とか、それでもまた来週も、とか、いつものところにあなたがいないことがわかるから、そのすっぽり空いた時間を想像して、悲しくなるんだろう。
ひとつひとつの仕事が終わる。
ひとりひとりの方とお別れを告げる。
「お世話様でした」
「じゃあ、また」
と言って、くるりと背を向ける。
ふうっと、息をはく。
他愛ないことで笑った瞬間や、ものすごく喜んだ瞬間、おそろしいほど悩んだ瞬間も、
あっという間に思い返し切ってしまう。
次が来ることを期待する。
きっとどこかでばったりと。
けれど、その次はいつ来るかもわからない。
その次が来ないところにじぶんが行こうとしていることも分かっている。
だから、春はいじわるだ。
何度も、何度も、思う。
春は、いじわるだ。
人生をかっぽしよう