佐藤ノート№4 『凡人』
二度の失敗をするまで、
自分は何かすごいものになってやるのだ、
そしてその時はきっと来るのだと
思い続けていた。
自分が向かわずとも、
未来が勝手にやって来る。
それが天才だと
思い続けた。
しかし
二年も受験を失敗し
自分は少なくとも
その種の人間ではないことに気付いた。
自分は天才ではないかもしれない。
むしろ
凡人にもできることが
自分にはできないから
ただ、
それを凡人とは違う
という風に見せていた、
詐欺師でしかなかったんじゃないか。
大嘘つき
自分が自分を罵る声ばかり聞こえた。
誰かに相談することもできなかった。
自分の見せかけの才能を
信じてくれていた人に申し訳なかった。
アイデンティティークライシス
なんていう格好いい言葉は
このときの僕のためにあるんだろう
と思う。
それでも、
せいぜい十数年生きただけなのに
何もかも知ったようなことを言う友人を
何人か見るうちに、
凡人にさえなりきれていないと
知っている自分は、
まだ凡人になるチャンスがあるんだと
信じてみたくなった。
凡人になりたい
もし
まだ自分に
天才になる可能性があるとしても、
まず凡人になりたい。
そう考えると、
見習うべき対象はたくさんあった。
ぐっと世界は広くなった。
今もまだ、
凡人になりきれていない。
それでいいのかもしれない
まだ自分が成長できるということだから。