佐藤ノート№3 『繰り返す5月病』
浪人生にも
5月病はやってくる。
というか
僕の場合は
7月〜9月病も12月病も2月病もあった。
色んな理由だ。
周りについてのこと。
自分自身についてのこと。
そういう雑音が入ると、
決まっていつも聴く曲があった。
現役と一浪の冬に聴いていた曲だ。
心理学上、強い感情を持ったときに
していた行動は、
それをやる度に
その感情が思い出されるのだという。
僕はその曲を聞くたびに、
合格発表の場面を思い出した。
ない。
何度見返しても、
自分の受験番号がない。
そういう場面だ。
悲しいというより虚無感だった。
そこに番号がないのは、
「お前はうちにはいらない人間だ」
と言われているようだった。
そんなふうに形として
自分を否定されるのは初めてだった。
自分の番号だけ
きれいに一つとんでいた。
「なにも前後の人が受かってるんだから
流れで俺も受からせてくれよ」
馬鹿みたいなことを思った。
曲を聴きながら、
目をつぶってあの日のことを
わざとありありと思いだす。
本当にその場にいるように想像する。
じわじわと嫌な気持ちがよみがえって、
想像をやめる。
自分には今、
それを変える力がある。
権利がある。
いつもそう考えると、
イヤホンを外し、ペンを握って
紙に数式を書きなぐった。
人に絶望はつきもの。
絶望と一緒に後ろを見ると、
触れられない過去は
どんどん自分を弱くする。
逆に
絶望と一緒に前を見ると、
触れられる未来があるぶん、
少し力強くなれる。