正論じゃ後輩は動かないとその電話で教えられた
不安そうな声を聞いて、ぼくも不安になる。
バイトの後輩から電話がかかってきた。
今やっている仕事の荷が重すぎるという話。
この電話でぼくは
「正しさで相手は動く」なんて
自分がそう思いたいだけなんだということを痛感する。
My Cellular Phone / CanadaPenguin
正しさを伝えても全く動かない
後輩の言葉は
やっていけるのでしょうか、どうでしょうか、
という相談というよりも、
もう限界ですやりたくない、
というテンションの言葉たち。
電話は長時間に及び、3時間を超える。
(ウィルコムの定額プランだったので、1円も通話料かかりませんでした。ウィルコム万歳)
最初は話を聞きつつも、
自分なりのアドバイスをして、
ぼくとしての結論は「やりなさい。君はやるべきだ」というもの。
だから、
「それがどんなにきみにとって必要なことなのか」
ということを、筋道立てて話し続けた。
甘やかしてはいけない。
そう思って、苦しい気持ちは分かりつつも、
心を鬼にして対応を変えなかった。
「なんか勇気が出てきました」
薄めのハツくん。 http://miil.me/p/42e44 / JaggyBoss
状況が変化したのは、
電話も2時間を超え深夜を超えたくらいだったと思う。
ぼくも話したり聞くことにほとほと疲れてきて、ついに
「実はさ、今自分もこうしてるけど前はね、こんなんじゃなくて…」
と前の自分のダメダメっぷりを話し始めた。
それは絶対に話したくない類の話だった。
そんなお涙ちょうだいみたいな話で人を動かすなんてあってはならない。
だって
「あなたのために頑張ります」と、わけの分からない熱血ドラマになってしまうと思っていたから。
けど、疲れてきてもういいやと思って話してしまった。
そうしたら後輩は
「佐藤さんはどうして今うまくやれるようになったんですか?」
と聞いてきた。
だから自分なりのこれまでの山あり谷ありを話してみた。
そこからしばらく
ぼくの話をする時間になった。
アドバイスというよりも
ぼくの「歴史」とでも言ったほうがいい。
とにかくぼくは
何かを説得しようとかメリットを与えようなんてしないで、
自分も心酔するくらい自分の世界をふりかえった。
で、後輩はそれを本当に楽しそうに、
ときどき感動するように「へえ」とか言いながら聞いていた。
そうしてしばらく話したあとだった
後輩の一言が深夜を超えた電話で眠気の感じるぼくを起こす。
「佐藤さんにもそういう時期があったんですね。
なんか勇気が出てきました
わたし、やれそうです」
勇気を与えることができたわけだ。
自分の意図しないことで。
テコでも動きそうにない後輩が。
「あなたのために頑張ります」
なんてベクトルのおかしいことにならなかった。
「あなたの話を聞いて勇気が出ました」
という至極まっとうな決意を呼び起こすことができた。
厳しさや説得は何のため?
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できなかった自分をさらけ出すということ。
それまでのぼくはできている自分ばかりを見せていて
(それは意識しないところもあったのだと思うのだけど)。
それは、できなかった自分を相手に見せてあげるのは
相手や自分に対する甘やかしだと思っていたから。
「ここまで登ってこい」という厳しさこそが
相手や自分のためになると思っていた。
そして
「先生、先生の話感動しました!
ぼく、先生のために頑張ります!」
下手な友情ドラマのように
よく分からない頑張りを生んでしまう。
それが嫌だった。
けど、実際は
ぼくが甘やかしとか思って厳しくしていても
ぼくの願いとは違って、
相手が動いていなかったのは事実。
そもそも、先輩であるぼくにとって大事なことは
相手を甘やかさないとか、
お涙ちょうだいはやめようとかではなくて、
成果を上げてもらうことだったり
仲間が「よし、やってみよう」と
ワクワクすることだったのだ
と気付かされた。
厳しさだったり甘やかしだったりは
成果ややる気を引き出すための「手段」でしかない。
なのに、ぼくはそれを逆側に考えて、
意味もなく甘やかさないでいただけだった。
そして相手を結果的につぶしていた。
正しい自分でいたいだけだった。
「目的」を相手ではなく自分のほうに置いていた。
そう言えば、
かつてぼくは上司から
「バイトチームのエネルギーがひとつになっていない。
今まで佐藤がどんな思いでこの仕事に取り組んできたのか、
どんな失敗やどんな挑戦をへて今ここにいるのか
話してあげてほしい」
と言われたことがあった。
「分かりました」と言いつつも、
「そんなこと話して気持ち高ぶらせるのは
方法として卑怯だ」
と思って話さなかった。
それが卑怯な手段かどうかは、自分が勝手に決めたことだった。
後輩にも言われた。
「もっと佐藤さんのやってきたことを
どんな気持ちでやって来たか含めて
聞いたことない人にも話してください」
「いや、そういうのは
ごく一部の人が分かっていれば十分な話だよ」
と受け入れなかった。
話すことが弱いことだと思っていた。
弱さは、みんなにさらけ出すことではない。
だから話そうとしなかった。
けどその電話を通じて、まざまざと実感した。
ぼくの試行錯誤こそが、人にエネルギーに感じるんだと。
正しさなんてそこでは一ミリたりとも役に立たない。
*
その後輩との電話のあとから、
ぼくは後輩への指導方針を一気に転換することになる。
相手が気持ちよく仕事をして
そして成果が出ることこそ大事で
そのために自分は手段を選ぶ。
これは
『アドバイスして感動すらされるために「タイムスリップ」しようよ』
でも書いたことだけれど
できる自分しか見せないと、
どうせ自分の話を分かってくれないだろう。
この人に言っても伝わらないだろう。
そんな人が自分にする提案や助言なんて
最初から自分とは別世界だ
そんなふうに思われて受け入れられない。
ぼくも、ダメダメだった。
失敗してきた。
やめてやろうかと思った。
ちょっとずつちょっとずつ進んできた。
だから今ここにいる。
それが、君の先輩だ。
それこそが相手が欲していることで
それこそが相手への正解。
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