21世紀おでん批判 概論
変なプライドがあって。
コンビニでおでんなんて絶対に食わぬと。
ぼくにとっておでんなんてのは
悪しきものだったわけです。
おでんってのは
家族なり友達なり集まって
ひとつの鍋をつついて食べるものであって
そんなちっちゃなカップに
一人分入れて食べるもんじゃないわい。
そこまではっきりではないけど
感覚としてはそういうものを
持っていたわけですね。
「コンビニおでんうまいよ」
だからそんな風に
友達が誘惑してきても
ぼくは悪しきものに
手を染めるわけにはいかなかったのです。
ただついに
どうしてもお腹が減って寒くなって
手を伸ばしたときがあったんです夜中に。
鼻すすりながら
友達数人と身を小さくして
そして適度な距離感で
近づいて食べたんです。
そしたらですね。
うまいんですよこれが。
本当にうまい。
なんじゃこら、と。
はんぺんなんじゃこら、と。
ちくわってこんな主役になるのか、と。
スープ全部飲み干しましたよ。
おでんってこんなごちそうだったかと。
ただですね。
やっぱり。
一人で完結してるんですよ。
カップ一杯で終わっちゃってる。
箸を伸ばした先に、だぁれの箸もない。
「美味しいね」
そう言っても
それはあくまで自分の「美味しいね」であって
あなたと一緒の「美味しいね」ではなくて。
「美味しいね」って言って
「ね」って返すのは
あなたの感じてる「美味しいね」。
いまここで感じてるぼくの「美味しいね」は
きっとあなたには届いていない。
だって違うカップの話だろ。
そういう寂しさに
余計に身を小さくさせられた思い出はあります。
美味しいんですけどね。すごい。
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