とても寂しかった。そのゼリーが。
なんかさびしかったんです。
そのゼリーが。
駅のペデストリアンデッキで、見晴らしの良いときに
植木のところに腰掛けられるので、そこでご飯を食べる。
今日はサンドイッチ。
天気の良い日に外でサンドイッチを食べるのは、何よりの幸せで。
もぐもぐと横に目線をやると
そこにはスーツの男性の姿。
ああ、昼休みか、お疲れ様です。
それとも就活かな、お疲れ様です。
いずれにしても
お疲れ様です、とそう思う。
けど、何だか違和感を感じて。
男性は恐ろしいほどの背筋の良さで座り
しゃんとしたバックから取り出した
簡易食のゼリーをきちきちっと開ける。
そして背筋の良い体へと流し込む。
その手は、止まることなくパッケージを絞りきる。
息継ぎを、しないのだろうか。
僕はあっけにとられる。
ふーっと息を吐いたかどうか。
そうしたのもつかの間
スマホを出して、ピッチ良く画面をスクロールする。
すっと立ちあがり
行ってしまった。
僕がサンドイッチをひとかじりするか、しないか。
本当にお疲れ様なのです。
こういうお疲れ様のおかげで、僕は安穏とサンドイッチをかじっていられる。
サンドイッチを食べる時間が何とも言えない時間になりました。
僕は、なんかさびしかったんです。
あのゼリーが。