本当に相談したいことって、人を目の前にすると話せなかったりする。
「好きな食べ物は何?」って聞いたとき
三つ目に本当に思ってることを言うという。
本当だろか。
気持ちは固まっていても、口は開かない。
「そんとき、彼女とベンチに座って、夜中までとにかく話して」
仕事をやめて本当に自分がやりたいことに挑戦してみたい。
うまく切り出せなかった彼の背中を押したのは、ベンチの横に座る、彼女でした。
「ほとんどは他愛ない話をぽつぽつしてたんだけどさ
けど、ある瞬間にポロっと言えて、すごい感謝してんだよね」
その話を聞きながら
ぼく自身が救われたときのことを思い出していました。
ベンチで話したことが、彼の助けになったのでした。
そしてぼくは、同じように好きな女性と雨を見て助けになったのでした。
雨の日のカフェの相談ごと
カフェの軒先から雨がポタポタと落ちる日のことでした。
深刻な、そこそこ深刻な話でした。
将来の進路をどうするのか。大学院に進むか進まないか。
ずっとずっと考えていて。
なんだか魚の小骨のようにつっかえていて。
けど、なんだか言えなくて。
どんなかたちで言えばいいのかとか、今の空気で言うことじゃないよなとか。
だから言えずに、ずっとずっと他のことを話していました。
もともと相談事を打ち明けるのが苦手で。
結局一人で抱え込むタイプだったのです。
抱えたくせに爆発するタイプなのです。
目の前には、その当時好きだった女性がいて。
彼女とぼくはずっとカフェの窓から外を眺めていて。
そうすると、彼女はずっと雨の話をするんですね。
「雨ってさ、昔飲んでたよね」
そう彼女がこちらを見ずに外を眺めながら言葉だけこっちに向ける。
「飲んでた?」
「飲んでたよ。『水分補給だ〜』って言って、口を、ほら空に向けて飲んでた」
「変なの」
「変かな〜」
そうして、少し話したかと思うと、コーヒーカップをつまんで一口飲んで、少しだけじっとこっちを見て、また窓の外を眺めて
「雨の匂いって、あるよね」
「ああ、あるね。わかる」
「だよね。雨上がりの匂いが好きだけど」
「天気雨とかね、なかなか良いよね」
「あー。そうだねー天気雨ねー」
そうしてまた、コーヒーカップ。一口。少しじっと見て。
それがあと何回か繰り返されたとき
やっとぼくはなんとなく決心してそのままの流れで言ったのです。
「大学院。悩んでるんだ」
ベンチで話したほうが良い理由
Chupa Chups / Juanedc
ベンチで話した彼も、ぼくと同じように相談がそれほどうまく吐き出せないタチで、
ぼくはまるで自分を見るようにいつも彼を見ていました。
そんな彼とぼくが救われた経験。共通するものがあると思うんです。
それはまず、お互いにお互いを見ずに、関係ない話をし続けたこと。
ぼくは目の前の女性と雨の話をし続けました。
彼は最初、彼女と公園で昔やっていた遊びの話をしていたそうです。
きっとこれが、最初から全部沈黙だったら、
相談事なんて言い出せないと思うんです。
かと言って「なんか話?」とか言われたら、
「いや」とか言ってはぐらかしてしまうかもしれない。
だから、関係ない話でも、とにかく空気ができるまで、していたほうがこっちとしては嬉しい。
そしてそれに加えて、ぼくらはずっとお互いを見ないで雨の外を見続け
友達らはずっとベンチに座ったりブランコに乗って横並びになりながら話をしたそうです。
それから共通することは、少しだけ間をとってもらうこと。
ぼくがカフェで話をしていたとき、
彼女は少し話をして間を取り、
そしてまた話すを繰り返していました。
友達の場合も聞けばそういう状態だったらしく、
自分がもやもやしているとき、彼女はいつもよりも余計に間を取りながら話をするそうで。
「きっとさ、彼女はある程度分かった上でタイミングを待ってくれてんだよな、そうやって」
そうなんだよなあ。きっと。
そうやってちょっと下手くそなぼくらを急かさずに先回りもせずに、
きっと待ってくれてるんだよなあ。
***
ぼくらが悩んでいるのなんんて、きっと見えていて
それでもずっと、同じ方向を見ながら、タイミングを待ってくれてるんだろうな、と。
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