だから君の指示は嫌われる?指示と「相談」合わせてこそ人が動くと教わる
「佐藤くんさ」
と言われて職員さんに呼び出されたのは、バイトのリーダーになってしばらくしてからのこと。
事務室じゃないところに連れていかれる。
言いづらそうに言われたことは
「最近さ、ほかのバイトくんらの不満けっこうきくんだけどもさ」
Pencil macro "close up" / orangeacid
「なんのですか」
職員さんの「不満」という単語に、反射的にやや敵意を入れてしまって聞き返す。
なんとなくわかっている。
最近の仕事の内容に対してだろう。
とりあえず次から次へと新しい仕事が入ってくるから、それを指示していた時期だった。
指示しているときから、反応が悪いのは知っていた。
知っていて、ちょっと無視していた。
「あたらしいことそんなにどんどんやられてもさ、やっぱりミスも多くなるしさ」
ほかのバイトのことをかばうように職員さんがなだめようとする。
そんなこと言うのだれですか、
ということばは、さすがにぐっと飲み込む。
「けど、時期が時期ですし。
いろんな仕事はどんどん増えていて、さばかないと」
うーん、と職員さんは難しそうな顔をしたまま、止まる。
「佐藤くんがね、ちょっとゴリ押しすぎだって声も、聞いてて」
少しことばを探しながら、そして遠慮しながら、言う。
「けど、決まったことだからもう、ぼくには、うーん、なんとも」
ぼくだって楽しくてやってるわけじゃない。
「佐藤くんさ」
「はい」
「仕事やるのはさ、人だよ」
「はあ」
伝えづらそうに、けど、伝えないといけないように、言う。
「いやあのね、組織で働くからおれもわかるんだけどもさ。
けど、決まったからやれ、佐藤くん言われたら、どう?」
「いやっすね」
いま、戒められている。責められている。
それがわかるから、やや嫌がりながらことばを選ぶ。
「やっぱどういうかたちであってもさ
ひとこと相談してほしいってのが気持ちなんじゃない?」
「決まっててもですか?」
「そう、決まってても」
頭をよぎったのは、ちがうある上司のこと。
だからあなたの指示は嫌われるんだよ
Ten Don at EbiTen / CanadaPenguin
思えば、ぼくはことあるごとに
「権限はこっちにあるから」
というふうに、権限を盾にする上司のそういう発言がきらいで。
「いやならやめてもらっても構わんよ」
ということばもきらいだった。
いや、そりゃ権限あるのはたしかだけどさ。
そういう話じゃなくてさ。
だからあなたの指示は嫌われるんだよ。
と、組織内にたしかにあったそのひとへの不満の声を見て、思っていた。
ただ、じぶんが言う「そういう話じゃない」ってのはどういう話じゃないことなのか
じぶんの中でも整理がつけられずにいたので、
いつもどこかでモヤモヤしては、上司に従っていた。
そういうじぶんもきらいだった。
だからそうはなりたくない、と。
だから相談してみようと。
たしかにこわいけど。
決まったのに、相談したら、「いやです」とか言われたら。
相談するとやっぱり不満をもらって、それに対して説明をして、
たまに「頼むよ〜」とか言って
そうすると「はあ、しょうがないっすね」とか言われて
それでも、前よりも、ちょっとずつ、ちょっとずつ、前向きなことばをもらうようになって。
何よりも、やっと見えてきて。
チームのメンバーたちが何がいやだったのかということ自体。
相談しなければ、ずっとわからないことで。
チームをおおきく動かすのはルールでも権限でもない
リーダーの仕事は、情報を集めて、判断して、仕事をしてもらうこと。
たしかにそうなんだけども
判断したら、それがスムーズに実行されるわけじゃない。
よく、チームは「からだ」に例えられる。
じぶんのからだは、頭が命令・指示すれば、スムーズに動く。
(もちろんいつだって動くとは限らないけど動きやすい)
けど
チームの場合は、リーダーが命令・指示しても、スムーズに動かないときもある。
だって、そのとき、手足として行動にうつしてくれのは、神経のつながらない他人だから。
他人とわたしをつなぐのは、コミュニケーションなわけで。
そこに行動をうむには、納得が必要で。
だったらそこには気持ちが入ってくる。
納得は、ルールではない。
それがルールや権限という「スイッチ」のようなものひとつで動いていくと思っていたわけで、ぼくは。
納得がなければ、うまく動かないし
それどころか、不満はいつか、ひとをやめさせてしまう。ひとを反逆者に変える。
だから、決まっていることでも、相談が必要なんだと思う。
「決まりました、はい、やって」
そんなぶっきらぼうな言い方ではなくて
「こういうことになったんだけども、どうだろうか、力を貸してくれる?」
***
もう決まったことなんだろう。
そういうことではなく。
もう決まったことだからこそ。ぼくは言うようにしている。
それでもやっぱり納得をうむってのは、日々むずかしさを感じるけれども。
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