不倫相手をやめるよ。という電話が年明けに来た
年明け早々に不倫相手をやめるんだ、という電話が、女性から来た。
(いつもそうだけれど、こういう内容を書くとき本人にきちんと確認を取ってますお)
そうなんだあ。と淡々と話を聞く。
電話口の向こう側の声がカラッとしたものだったから。
空元気なのかもしれないけど、それでも、だ。
それでも誰かが何かをきっぱりとやめると言ったときって口を挟むほどに強いのだ。
言われる方は「よし、しかと聞いたぞ」と言って肩をたたくだけでいい気がする。
それにしても、だ。
なんだかデジャブだな、と思った。
あ、そうかと思い出したるは昨年の新年のこと。
そういえば、昨年の年明けもそうだったことを思い出したのです。
もちろん別の女性から、不倫相手をやめようと思うという話を聞いたのであったよ。
否が応でも「新年」と「不倫」と「やめる」という言葉が、ちょっと飲みすぎてぐんにゃりする頭の中で宙を舞う。
「新年」「不倫」「やめる」「新年」「不倫」「やめる」「新年」……
やめるね、不倫相手。
とその人から聞いたのは、昨年早々。電話で。
お、おう、みたいな感じで返事をしたと思う。
不倫相手と特に仲が悪いわけでもないし、何かがこじれているわけでも、彼女の中にも不倫に対しての葛藤があったわけでもなかった感じだったから。
戸惑ったというか、いまさらどうして、ということがあったから。
じぶんが不倫をするのはチキンなので怖くてできない(きっと。たぶん。もしかしたら)
けど、不倫をしていた人の実態を聞くのは嫌いじゃない。
彼女からもやっぱり、それまでずうっと不倫ってどういう感じなのか話を聞いていて。
メッセージを特別な名前にしてパッと見で周りの人から連絡相手が分からないようにしたり、着信を消したりする。
なんだかじぶんとの関係が積もっていかない感じがするね、とちょっとだけ哀しみを込めて言うと、
いや、べつに、と返してきた。
さっぱりした性格。だから不倫のように一瞬の雨宿りような関係が性に合ってるのかな、なんて思ったりした。
「去る者追わず」は主義として持ってる。
って話も前に彼女から聞いたし。
お互い違う会社に勤めていて、彼女から連絡することはほとんどなく、彼から会いたい2、3日前くらいに連絡が来る。
料理は嫌いじゃないし、得意なほうだけれど、泊まれるとき以外作らないし食べない。
彼が家に帰るとご飯が作られているから。
なんとなく彼が部屋に来て、
何となくテレビのスイッチを入れて、
何となく仕事のことなんかをしゃべって、
抱かれて、ちょっと横になって
おもむろに起きて、彼は家に帰る。
匂いがうつるといけないから、家には芳香剤や香水はまかない。
それから、匂いをごまかすためにタバコを一本吸って、帰る。
彼が帰ってからは消したテレビをもう一回つけて、料理する。
彼が来たからといって、リズムは崩れないんだと。
たえらんないなあ、おれはって言うと、無理だよ、大地みたいな寂しがり屋は、って言われた。
不倫相手のひとらの話を聞くと、思い浮かんでくるのは
「プロ意識」
みたいな言葉。
人を受け入れるために特別な訓練でもしたんじゃないかという人が多いこと。
それでもきっとどっかで寂しがったりするのだろうなと思うけど、
それはもしかしたら話を聞くこちら側が寂しがって欲しいと思ってるだけで
本当に寂しくなんかないのかもしれない。
よくわからない。
けれど、そんな彼女が、昨年の新年に不倫関係をやめた。
だから、よけいにうろたえたわけだ。
なんで、と聞くと、
「一言で表すと安定感」
という言葉が返ってきた。
彼女らしい、淡白な返事であることよ。
不倫をしているときは、じぶんも働いていたし、誰かがじぶんのところにやってきて、そしてどこかに出かけて、そういうことが別に苦じゃなかった。じぶんもどこかに行くしね。お互いひとところに収まらなくてもやってけるじゃない。
けど、実家に帰ってふとね。どこかに私も安定感持ちたいなって。
年齢とかは気になったりしたの?と聞くと
「それはねーーーーあるね」
ははっと笑いが聞こえる。
そんなことを、今年また思い出したのです。
新年ってどこかそういう満月みたいな力があるんだろか。