留学する若者を増やすには、「坤輿万国全図」が必要なのかもしれない
今の若い人はどうして留学しようとしない。
もっと海外に打ってでろ。
そんなことがずっと言われている。
ぼく自身も、長い間留学をしようとしているけど
なぜだかそこには踏ん切れない。
そうするために、何かが、欠けている。
その理由のひとつが、「大きな表現」なんじゃないかと思う。
おーっと思わず顔がほころんだ。
それまで教科書の中の資料集でしか知らない
坤輿万国全図(こんよばんこくぜんず)を東北大学附属図書館で目の前にした。
『坤與万国全図』
イタリア人のイエズス会宣教師マテオ・リッチ(1552-1610)が、1602年に出版した世界図。
東洋を中心とした世界図としては、現存するもので最古のもの。
中央部には世界図が描かれており、周辺には天文 学・地理学などの当時の最新の科学的知識が記録されている。
日本には、江戸時代初期に伝来し、江戸時代中期以降の 日本人の世界認識に大きな影響を与える。
目の前にしたその大きさ
縦1.7m、横3.8m
教科書で見るよりもはるかに大きく、はるかに威力がある。
ちょっと右に左に行かないと、全てを見ることができない。
ちょっと目を近づけないとその細部の地域名が見えない。
その大きさに
「世界はこんなに大きいんだ」
とわくわくする。
きっと江戸時代の人もこれを見て同じようにわくわくしたんじゃないかと思った。
世界、見てみたいなあ
とぼくはしみじみ感じて、二度も足を運んでしまった。
File - Wikipedia, the free encyclopediaより
こういう、できるだけ生の体験を与える作品が、感動させ行動を変えるには必要なんだと思った。
そして生の体験のためには、大きさ、という表現が大きく影響する。
たとえばピカソの『ゲルニカ』という作品がある。
これも教科書でうんざりするほどよく見る作品。
「戦争の悲惨さを描いた」
という作品の説明を読んでも、ただの奇想天外な絵にしか見えなかった。
けれど、そのサイズをあるとき聞いた。
縦3.5m、横7.8m
でかい。
目の前で見たことはないけれど、想像してみた。
あの意味のわからない絵をそのサイズで目の前にしたら
ぼくは、きっと、恐ろしさに近い感覚を抱くと思った。
たとえば東日本大震災のあと
現地の人は、口々にこう言った。
津波で流された何もない場所を、とにかく見に来て、と。
そして見た人たちが言った。
見に来て、揺さぶられた、と。
そして何かできないか、と。
大きさは、恐れを感じさせるのにとても大事だ。
そして人は、恐れに対しては逃げるよりも、適度な距離でそこに近づこうとする。
今はインターネットがますます発展して、
世界地図はスマートフォンの画面から
いくらでもズームアウト・ズームインして見ることができる。
全てが同じ大きさで、全てが手のひらで収まって。
恐れや畏怖の感覚が奪い取られていく。
水平線を見たとき感じる、
「敵わない」「恐れ多い」という気持ち。
山奥の森林に包まれたときに感じる、
「自分は小さい」「世界は大きい」という気持ち。
それらがなくなっていく。
大きなものへのよく分からない興味を失う。
留学したい、外を見てみたい、という人を増やすには
こういう仮であるけれども、極限まで生の体験に近い経験をさせる必要があるのではないか。
そのためには、手のひらで収まる大きさを奪った体験では足りない。
サイズを贅沢に使った表現が、人の心を動かし、身体を動かすのだと思う。
東北大学附属図書館では、H2611/3まで展示会を行っています。
Tohoku University Library - 明日から開催!!「響鳴する知の遺産 ~グローバル視点による名著の数々~」 東北大学附属図書館本館リニューアルオープン記念展示 (10/8~11/3開催)
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