「好き?」って聞かれたときの答えって「好きだよ」じゃない
「好き?」って最近よく聞かれんだよね。
とAくんが言う。
Aくん、Bちゃん、ぼくの3人が
マックに集まって、そんな話が始まる。
何にもわからないぼくが、Aくんの発言を聞いて
「いいね〜うぃ〜羨ましいねえ」
と冷やかす。
「いや、そういう問題じゃねえんだよ」
とAくんがぼくが求めていたのとは全然違う反応をする。
「なんか変でさ」
「変?」とBさんが突っ込む。
前々から「好き?」って聞く人ではあったのだけど
やたらと聞くようになった気がするとAくん。
「で、なんて答えてんの?」
ぼくが聞くと
「その都度、好きだよって答えてる」
とAくん。
付き合ってるなら好きに決まってる?
朝マック / yto
二人がそこまで深刻そうにしている意味がぼくにはわからなかった。
だって、「好き?」って聞くのは
「好き?」「好きだよ」と言い合って幸せを実感したいという
ものっすごいハッピーな状態で
周りからしたら大変メンドクサイ状態なだけだと思っていたから。
だから、AくんやBさんにもそういう自分の考えを言った。
「だからそんなに気にすることなくない?」
そうすると、Bさんが「う〜ん」と納得いかない顔をして
「私は違うと思う。彼女、確かめたいんだと思う。好きって気持ちを」
「今の彼女の気持ちとしては、
好きってのが実感としてなくって
グレーゾーンの状態なんじゃないかな。
だから、確かめるために聞いているんだと思う」
「そうかな〜?
だって好きに決まってんじゃん」
「決まってないから聞くんじゃない?
決まってること、確認しなくても分かることなんて聞かないし」
たしかに。
そりゃ、そうだ。
「好き?」と聞かれたときの求められた答えは
ビッグマック / hirotomo
「これ、どうしたらいいんだろうね』
AくんがBさんに聞く。
そうすると
「『好き?』って言われたときは
『好きだよ? どうしたの?』」
と答えれば?」
Bさんが言う。
「『好き?』って確認したがる
不安だったり不確かな気持ちがあると思うから
『どうしたの?』って気にしてあげればいいんじゃないかなあ」
かつてのぼくなら
もはや付き合っている人に
「好き?」と聞かれたら
ついつい
「好きに決まってんじゃん」
とだけ言いたくなる。
そりゃそうだろう、
好きだから付き合っているわけだし。
けど、そんな「好き」が当たり前の状態なのに
「好き?」って聞かれることに疑問を持ってしまう。
そんな状況なんだろう。
確かなものは、言葉じゃないのかもしれない
言葉と実感は違う。
言葉でいくら
「好きなんだな」
「自分を愛してくれているんだな」
と思っていても、
実感が足りないから
物足りなさを感じてしまう。
だから、人間は
試行錯誤してそれにぴったりな言葉を探してきた。
夏目漱石もそうだし、
「飛び越える」という言葉がぴったりなのかもしれないし。
頭の中で考えて分かる「好き」という言葉じゃなくて
それはむしろ言葉にならないような、できないような感覚。
それは胸なのか、心臓なのか、内臓なのか、どっか分かんないけど
「あ、好きなんだな」と、
「じわっ」とか、
「もやっ」とか、
「ぽわん」とか、
広がる感覚。
これを求めて、
これが本当にあるのか確かめたくて
けど相手のからだをパカッと開けることなんてできないから
言葉でしか聞けないから
だから確かめるために聞く
「ねえ、好き?」と。
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