人生かっぽ

人生かっぽ —佐藤大地ブログ

哲学、言葉、人生観、仕事、恋愛、など人生をかっぽするような物語をつむぎます。宮城県 仙台市を主な活動拠点とする佐藤大地のブログです。2014年からEvernote公式アンバサダー。大学院では政治学を研究していました。

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紹介します。本47冊で僕の大学研究6年間を振り返る

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前回こういう記事を載せたら、多くの反響をいただくことができました。
紹介します。厳選本51冊で僕の大学生活6年間を振り返る - 人生かっぽ —佐藤大地ブログ



タイトルが勘違いさせてしまったようで
「え、研究の本全然ないじゃん」と言われたのですが、
このブログの読者層を考えて、わざと載せませんでした。


で、やっぱりぼくが大学でどういう感じの本読んで考えてきたのか紹介するのもひとつだよなあと思ったので
読者の方がどれくらい興味を持ってくれるかわかりませんが、ぼくのメインストリームとして印象深かった本を紹介していきたいと思います。
今回ばかりは言い回しが多少難解になってしまうことをお許しください。


あ、ぼく自身のメインの研究テーマとしては、「リスク問題と討議デモクラシー」です。


前回とは違って厳選はしていません。
冊数とかそういう問題ではなく、自分が読んで、強く記憶に残っているもの(それは難解だったなあとかも含めて)を紹介して振り返っていきます。



なので、前回よか淡々と紹介していきます。


また今回は、
具体的なケースについて調べた書籍は載せていません。
例えば、「水俣病」「新潟空港事件」「長良川河口堰事件」、各種原発訴訟とその周辺情報の書籍や判例も漁りましたが、今回は主に根幹になる思想的な部分の書籍の紹介に絞りました。
翻訳版があるものはそちらを載せています。


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ひとりひとり違う人間を政治でどう扱うか


政治と複数性―民主的な公共性にむけて

政治と複数性―民主的な公共性にむけて

近代以降、アイデンティティは理性を求められ、画一的にならざるを得ないことになった。
その結果、例えばゲイや各種病気を持つような「狂気」とも取られるような社会に認められない自分を出し、権利を求めることはしづらい社会になった。
そのような「同質性」を良しとする社会から脱することを提案する。


フーコーの狂気と理性と監禁と

監獄の誕生 ― 監視と処罰

監獄の誕生 ― 監視と処罰

狂気の歴史―古典主義時代における

狂気の歴史―古典主義時代における


17世紀後半から、人は理性的であることを強いられる。
それと同時に、それまで「狂ってる」とされるものは、扱いが一変し監禁や隔離の対象となる。
アイデンティティが他と同じか、正常であることを認められることを必要とする。
自らもホモセクシャルであるフーコーであるからこその視点なのではないかとも思う。
文章は、難解で、翻訳も難解。
自分の中に眠っているアイデンティティを上手に表現できなくなってしまい、さらには自分の中の異常さが、逆パノプティコンのように制度側が監視され、さらにはSNSなどで互いに監視するような時代に、私たちはどう向き合うべきか。

追記:「ホモセクシャル」にすべきところ、「ゲイセクシャル」にしておりました。訂正致しました。mandokoroumiushiさんご指摘感謝いたします。


ムフ


政治的なるものの再興

政治的なるものの再興

冷戦以降、イデオロギーの左右対立が消滅し、第三の道が思想として現れる中で、自由民主主義はいかにあるべきか。
ロールズ、サンデル、ギデンズなどの自由主義共同体主義の対立も踏まえながら、ムフなりの対抗しながら民主主義を推し進めよという批判を示す一冊。




民主主義の逆説

民主主義の逆説

『政治的なるものの再興』の自由主義の観察から、もう一歩踏み込んで自論を展開する作品。
一冊をまとめて書いたものではなく、様々な場面で書いてきた論稿をまとめたもの。
カール・シュミットロールズハーバーマスを紹介しながら彼らを批判する。
対抗者を想定し、議論せよという「闘技デモクラシー」により輪郭を与えた作品。


コミュニケーションと政治の関係

公共性の構造転換―市民社会の一カテゴリーについての探究

公共性の構造転換―市民社会の一カテゴリーについての探究

コミュニケイション的行為の理論 上

コミュニケイション的行為の理論 上

コミュニケイション的行為の理論 下

コミュニケイション的行為の理論 下


事実性と妥当性(上)― 法と民主的法治国家の討議理論にかんする研究

事実性と妥当性(上)― 法と民主的法治国家の討議理論にかんする研究


コミュニケーションと政治の関係はどのようにあるべきか?
政治の舞台では、取引と交渉、プレゼンテーションだけで良いのか? それとも意見交換のような利害関係を超えたコミュニケーションも必要なのか?
真の権力とは、お互いのコミュニケーションを通すことで了解した事柄にのみ生じるものだ。
ハーバーマスはコーヒーハウスなどのざっくばらんでオープンな場所を例にあげ、その空間でもう一つのデモクラシーをつくることを提案する。

まあ、難しい。ハーバーマスは。言葉が抽象的すぎる。


カールシュミット


現代議会主義の精神史的地位 (みすずライブラリー)

現代議会主義の精神史的地位 (みすずライブラリー)

政治的なものの概念

政治的なものの概念


政治哲学界でいうところのイケダハヤトみたいな人。
政治は友敵関係を生み出し、それは相手を物理的あるいは社会的に排除するものである。と言った。
シュミットはナチスのもとで研究を続けたため、その文脈で読まれているので、余計危険視されがちなのだけど、国家というシステムを冷静に観察し、それが生み出す政治というものをきちんと分析している人だと思う。
そしてこの分析を無視した民主主義こそ、危険なのではないか、知らずに誰かを排除して満足しているのではないかと。
国家が国民の思想を包括的に認識し、扱えると考える現代だからこそ読みたい作品たち。

また、こと戦争に関しての著作はこちら。

正戦と内戦 カール・シュミットの国際秩序思想

正戦と内戦 カール・シュミットの国際秩序思想


シュミットについていきなり読みづらいと思ったときに助かった一冊。読みやすい。

境界線の政治学

境界線の政治学



ハンナ・アレント


人間の条件 (ちくま学芸文庫)

人間の条件 (ちくま学芸文庫)

人間とはどのような状態で人間と言えるのか? 私たちはどのようなときに生きていると言えるのか?
ナチスドイツを目の前にしたアレントだからこそ持てる人間への視点が、哲学的な鋭さを持つ。
「活動(行為あるいは行動)」「労働」「仕事」を通して、システムの下にいる人間が、「生きる」という状況をもう一度観察することで、もう一度、どんな政治システム、どんなモラルが必要なのか考えさせられる。
政治システムを全体主義よりにせずにひとりひとりのアイデンティティを尊重し、コミュニケーションにもとづく政治を実現するために参考にした本。

彼女の生き様



政治は科学とどう向き合うのか?


危険社会: 新しい近代への道 (叢書・ウニベルシタス)

危険社会: 新しい近代への道 (叢書・ウニベルシタス)

科学的リスクと政治の問題に向き合うには避けて通れない一冊。
科学技術が発展した社会において、社会の問題は、それ以前とは構造的に異なる。
科学技術の問題は、貧困問題のようなシステムによって解決できるものではない。
また、中央の政治とは別に「サブ政治」という新たな政治領域が現れ、この領域との付き合い方を考える必要が出てくる。


著者は最近亡くなって個人的に悲しい。



現代の社会は保険化する

二十世紀の法思想 (岩波テキストブックス)

二十世紀の法思想 (岩波テキストブックス)

現代法の展望―自己決定の諸相

現代法の展望―自己決定の諸相

科学裁判と社会を考える上でとても参考になった議論を提示してくれました。
リスク社会を考える上では「社会の保険化」という斬新な考え方を提案してくれる。
すなわち、福祉国家化することで、多様な価値観に対して平等に保障するには、標準的な主体という基準を持つことが必要になってくる。
そのために、特定の価値観を国家が保障することは難しくなっているのではないかという考え。


個人的には、「リスク社会・法の支配・討議民主」というネット上にあったPDFが共同体の善との比較などの議論が面白かったけど、今は無いっぽい。


中山さんも大いに関心を寄せる、予防原則についてはこちら。

予防原則―人と環境の保護のための基本理念

予防原則―人と環境の保護のための基本理念




ネット上にあげられていた金山さんの論文も、予防原則で有名なエヴァルドやベックなどを網羅的にまとめてくださっているので、ここらへんを知りたい方は良いかと。
『リスクと連帯』金山準

あとはベックあたりの議論についてもこちらのPDFがまとめてくれてる。
『F・エヴァルドの予防原則論 : 「悪しき霊の再来:予防の哲学の素描」書評』柏葉 武秀



熟議なんてうまくいくのか


自身も行政体などに入りながら熟議を実践するサンスティーンの著書

インターネットは民主主義の敵か

インターネットは民主主義の敵か

「熟議」「話し合うこと」の大切さが問われる現代の中でも、「よく話し合うこと(熟議)によって意見が偏っていく」という問題点などを指摘して、議会や司法などさまざまな場面での意見の偏りや矮小化を問題とする。
また、みんなでよく話し合って決めることと憲法との関係も議論する。


熟議が壊れるとき: 民主政と憲法解釈の統治理論

熟議が壊れるとき: 民主政と憲法解釈の統治理論

こちらはインターネットとの関係。
日本でもネット選挙が始まり、注目しておきたい議論。


少年は、なぜ刑が軽いのか?

少年法入門 第5版 (有斐閣ブックス)

少年法入門 第5版 (有斐閣ブックス)

少年の犯罪が問題になってきた昨今。
しかしなぜ少年だから刑が軽くなったりするのか?

少年法で裁けることと、裁けないことの葛藤を考えると、この国家をつくる上で「何を是とし、何を社会で教育していくのか」が見えてくる。

物語としてはこれは秀逸

さまよう刃 (角川文庫)

さまよう刃 (角川文庫)



戦争と中国と、体制の移り変わりを見る


自由主義に偏った見方かもしれないけど。

ワイルド・スワン(上) (講談社文庫)

ワイルド・スワン(上) (講談社文庫)

ワイルド・スワン(中) (講談社文庫)

ワイルド・スワン(中) (講談社文庫)

ワイルド・スワン(下) (講談社文庫)

ワイルド・スワン(下) (講談社文庫)


「体制というシステムの下にいる人」を見失わないということがぼくのテーマなので
こういう本も共産党のシステムを考える上では大事でした。
祖母、母、著者の三世代を通して、一時対戦終了後の中国を見ていく作品。



憲法は避けて通れない

憲法 第六版

憲法 第六版

日本で法を考えるには、やっぱり憲法は通っておく。
そこに改めて気付いたのは学部3年生のとき。
日本はこれをもとに動き、(本来は)この全部の方向性で動いていくのだから。

中でも芦部憲法は足腰のしっかりした、基本的思想で好き。


サンデルvsロールズ

民主政の不満―公共哲学を求めるアメリカ〈上〉手続き的共和国の憲法

民主政の不満―公共哲学を求めるアメリカ〈上〉手続き的共和国の憲法

民主政の不満 下―公共哲学を求めるアメリカ

民主政の不満 下―公共哲学を求めるアメリカ


サンデル、というと、白熱教室がパッと思い浮かぶ人が多いと思う。

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(下)

ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(下)

ぼくもこの東大講義に出席して後の自分の討議デモクラシーの実践活動に強く影響した。
が、
思想史的に彼を有名にしたのは、彼の白熱授業っぷりではなく
J・ロールズへの強烈な批判があったから。

正義論

正義論

万民の法

万民の法

政治学を考える人は名著であるロールズのこの書籍。
なぜこれが必読であるかと言えば、この中で中心的な話題になる「公正としての正義」が、アメリカを中心として現代の権利を考える上でとても重要なことを示しているから。
ぼくらを取り囲む自由、平等、正義、そういうものをきちんと考えるための一冊。


そしてサンデルはこのロールズの「無知のヴェール」への批判をしたことで有名。
つまり、簡単に説明すればこういうことだ。
自分がどの社会の何者であるか分からない者と想定する無知のヴェールをかぶれば、各人は自分だけに有利な利益を考えず、より平均的な利益を考え、正義にもとづく判断ができる、と。
しかしサンデルは、自分が何者か分からないのに、その頭の中にある正義とは一体どこから由来するのか、という批判。

ロールズとサンデル。
比較のために、セットで読むとその思想的な欠陥と可能性が見えてくる。


政治体とはいかにあるべきか


政治学 (岩波文庫 青 604-5)

政治学 (岩波文庫 青 604-5)

「人間はポリス的動物である」
という社会の教科書でよく見るアリストテレスのこの言葉の真意はどういうことなのか。

彼にとって、人間とはどのようなものであり、そのために社会(ポリス)はどのようなものであるべきで、それを支えるために政治システムはどのようなものであるべきなのか。
必ずしも、社会=民主政ではなく、むしろ民主制に対して懐疑的な視点さえ加えるアリストテレスの視点は、民主主義あたりまえの現代に生きる自分に批判的な思考を与えてくれる。
共同体とは、コミュニティとは、どのようにあるべきかという考察を前進させてくれた一冊。

システムの上に立つリーダーと、システムが持つ暴力をいかに操るか


「獅子のように強く、狐のように狡猾な君主」

君主論 (岩波文庫)

君主論 (岩波文庫)

「目的のためには手段を選ぶな」というように解釈されがちな本作であるけれども、より重要なことは、宗教と政治、モラルとシステムの切り離しを試みたという点。
この時代の政治の一つの課題は、宗教や道徳と国家の関係をいかに取り扱うかということ。そこの文脈は無視して読みたくないなと。
大規模なシステムとしての国家におけるリーダーはどのような判断や罰、恩賞を行えば良いのか。
そこには、熟議すればより良い社会ができるのではないかと考えるぼくに、君主制についての言論ながらも、強い反論を加えてくれた一冊。

ただ翻訳としては読みづらい。


近代以降のシステムとしての国家といえば、クラウゼヴィッツも。

戦争論〈上〉 (中公文庫)

戦争論〈上〉 (中公文庫)

戦争論〈下〉 (中公文庫―BIBLIO20世紀)

戦争論〈下〉 (中公文庫―BIBLIO20世紀)


国家同士の覇権争いとしての戦争に対する論考を通すことで、戦争と政治の関わり合いが見えてくる。
あんまり自分の論考には関わってこなかったかなあ。直接的には。

ただ、これ読むと、孫氏の戦略性のすごさがわかってくる。

新訂 孫子 (岩波文庫)

新訂 孫子 (岩波文庫)


国家論つながりで言うと、ジャン・ボダンの絶対王政を是とする国家観にもうちょっと踏み込みたいんだけど
この本読みたいのになかなか手に取れないでいる。今後読みたい。




政治は宗教とどう向き合う?


近代 想像された社会の系譜

近代 想像された社会の系譜


「個人」が社会とどのように向き合ってきて、社会の中でどのように存在しているのか。
それを考える上で、テイラーは、ひとりひとりが社会がどのように成り立っているかへのイメージである「社会的想像」という概念を持ち出す。
前近代から近代にかけて、コミュニティに「埋め込まれた」個人が、社会契約という形で国家に所属する「脱埋め込み化」が行われる過程の観察と、視点が斬新。

こっちは政治と宗教色からはちょっと薄いけども。個人的に好きな本。

「ほんもの」という倫理―近代とその不安

「ほんもの」という倫理―近代とその不安


アイデンティティを政治の中でどう扱うか、という点でこの書籍にも挑戦したんだけど

自我の源泉―近代的アイデンティティの形成―

自我の源泉―近代的アイデンティティの形成―

ちょっとだけ読んで諦めました。
いつかもうちょい向き合える日が来るよね。


井上達夫さん


自由論(双書 哲学塾)

自由論(双書 哲学塾)


紹介だけしておく(察して)


入門はこちら


西洋政治思想史

西洋政治思想史

概論だけど、十分な思想史の地図を示してくれる作品。

日本は時代の流れで思想を紹介することが多いけども
思想のカテゴリで整理したこちらも読みやすい。

法哲学 (〈1冊でわかる〉シリーズ)

法哲学 (〈1冊でわかる〉シリーズ)



***

以上です。
あと、学部初期はオウム真理教ナチスドイツの本をかなり読んでいて、思想統制と宗教コミュニティ、それから民主主義についてかなり考えていました。


書いていて、また読みたい本がちらほら出てきたので、引き続き読んでいきたいと思います。
今後研究する際にお役に立てば幸いです。



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copy.hatenablog.com

『あの日僕は彼の文章を読んで志望大学を決めた』
『学生の一番大きな宿題は「どうやってノートを使い続けられるか」考えることだ《前編》』


人生を、かっぽしよう
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